久しぶりに小津を観た。やっぱり全編を通して偏執的にこだわり抜かれたショットと構図の美しさには唸らされる。壺が単独で映し出されるショットは何も知らずに観ても気になるくらい意味深だったので、さまざまな解釈>>続きを読む
とても良かった。ちょっとアウトサイダーな側にいる友人にでも薦めたい、ファンタジックで少し風変わりな、不器用同士のラブロマンス。不器用さももう少しいきすぎていたらカウリスマキの映画っぽくなりそうで、そう>>続きを読む
ものすごい引き込まれた。パーソナルなドキュメンタリーだが、パーソナルだからこそ他人事として無視できないような普遍性を伴って胸に迫ってくる。登場人物のプライバシーと安全のためという現実的な理由で採用され>>続きを読む
すごい傑作だった。ひたすら悲惨だが、感傷的というよりどこまでも切実である。よくイタリアのネオレアリズモの映画と比較されているようだが、演出は結構マジカルなところもあり、劇映画として面白い。
ジャック・オーディアール監督作と言われなければ分からないような、なんだか軽やかで、それでいて成熟感のある作品。オーディアールは男っぽい映画を撮るイメージがあったので、共同脚本を手がけたセリーヌ・シアマ>>続きを読む
多用される顔面クローズアップによる凄まじい映像的迫力。特にジャンヌダルク役を演じたファルコネッティのポリフォニックに何かを訴えかける表情の力に圧倒された。ラストの火刑のシークエンスも凄まじくて釘付けに>>続きを読む
190分以上もあるのにひたすら好き勝手やっているのが愉快だし、チャーミングな映画で良かった。ただ、冒頭のジュリーがセリーヌを追い回すシークエンスが一番好き(素晴らしいので必見)。アクションとショットと>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
物語は時間と空間、現実と想像(幻想)を複雑に行き来して観る者をミステリアスな世界に巻き込んでいく。なぜこんな断片的でややこしい編集・構成になっているのかという疑問は、やがて明らかになる。この物語は、そ>>続きを読む
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普通の人間が魔女に仕立てられる映画だと決めてかかって観ていたが、一概にそうとは言い切れないような解釈の余地がある。人間の集団心理への問題意識と社会秩序への批判的な眼差しはあるのだろうが、角度によっては>>続きを読む
あえてバカバカしいような話だし、アンナ・カリーナをとにかく魅力的に撮った映画なので肩の力を抜いて観られる。それでいて、演出も編集も音楽の使い方も攻めていて、ポップと前衛が同居したような不思議な映画にな>>続きを読む
賛否がだいぶ分かれているので、ハードル下げ目で観に行ったらかなり楽しめた。とにかく最初から最後まで映像的な充実感がすごいし、終始流れる不穏な空気も気持ち良い。劇場(特にIMAX)で観ろと言われているの>>続きを読む
やっと観れた。良い意味でキッチュでポップで軽い作品。ゴダール入門にどうぞと言いたくなる(ここから入ると逆にきつい?)。ラストも「三文小説のように終わる」。三人でのマジソンダンスのシーンやルーヴル美術館>>続きを読む
奇跡なんていうものは嘘だ。でも、私たちはその嘘を目の当たりにして震えるほど感動してしまう。そもそも映画なんてものは人類の発明した偉大な嘘なのだから、この映画はまさに奇跡なのであって、まさに映画なのであ>>続きを読む
瑞々しく、荒々しく、冷たい映像。生と死の匂いがむんむんだ。全く同じではないにしても、誰もがこういう時期あるね。そういう感覚をまるごと包み込んだような作品。
アンナ・カリーナに抑圧され虐待される修道女のイメージは全然無かったけれど、観てみるとしっかり良かった。その"美しさ"ゆえにあらゆる場所で女として消費されそうになる。やっとの思いで抜け出した修道院の外(>>続きを読む
内容自体は渋いハードボイルドな作品なんだけど、編集がとても普通じゃなくていい意味でなんだこれと思った。細かく時間や場所を移動したり、フラッシュバックや想像と現実を行き来する映像。過去のシーンでは、なん>>続きを読む
静かで地味な映画だがじわじわと胸にくる。ある意味モダニズム建築が主役の映画とも言えるが、観ている間はただケイシーとジンの物語に身を委ねていればいい。小津安二郎の影響を感じさせつつも、ただなぞるだけでな>>続きを読む
ウォン・カーウァイ作品は、映画好きになって以来「今更観なくていいや」を逃げ口上にずっと後回しにし続けてきたが、また最近参照されたり(バリー・ジェンキンスやクロエ・ジャオなど)再評価されることが多くなっ>>続きを読む
コーヒーにそこまで強い興味があるわけではないが、それでもかなり面白いし勉強になった。特にコーヒー豆の生産の現場や過程が見られるのは良い。バイヤーやバリスタの話だけだったら、どことなく冷めた気持ちになっ>>続きを読む
美しい映画。背景がほとんど説明されず、全体的に謎めいた魅力がある。帰ってきた父の子供たちへの接し方は不器用で、明らかに問題があるが、それでも確実に愛はあるのだろうと強烈に感じさせる演出が胸を打つ。水を>>続きを読む
カウリスマキらしい悲哀のこもったコメディ。極めてシンプルな筋だけど面白い。殺し屋のおじさんがセクシーで良かった。ジョー・ストラマーの登場には声が出た。死ぬ勇気なんてなくて良いんじゃん。
フォーレ島の楽園のような美しさにまず心を奪われる。『ある結婚の風景』のイメージからこの地で夫婦の地味な会話劇が展開されるのかと思いきや、割とマジカルな"創作"についてのドラマがメインに描かれており、夫>>続きを読む
フレデリック・ワイズマンの作品らしく長尺だが、いざ実際に観てみるとその理由が分かる。ニューヨーク公共図書館の担おうとする役割と、それに伴う活動内容があまりに幅広いのだ。具体的には、書籍の貸し借りなどの>>続きを読む
中村錦之助の熱演(怪演?)。特にクライマックスの殺陣は凄まじい。個人的には、ほぼクライマックスのためにある映画と言っても過言ではないと思った。ものすごい勢いで全て薙ぎ倒して、あわよくば体制までひっくり>>続きを読む
家族を殺されて気が触れてしまった少女の顔、何回見ても独特の恐ろしさがある。呪怨の子供の顔よりよっぽど怖い。最も記憶に残るシーン。テーマ性的に、後に撮られた五社英雄の『人斬り』を思い出したのだけど影響あ>>続きを読む
緻密な脚本とストーリー・テリングの妙はまさに圧巻で、さすがアスガー・ファルハディ。やっぱり天才。
"英雄"は利用され、熱狂のうちに祭り上げられて消費される。主人公ラヒム自身も例外でなく、当初こそ"英>>続きを読む
観終わった後もしっとりと胸に残り、もう全く同じ人間ではいられなくなるような切実な映画。観る人によって受ける印象も考えることもだいぶ違うのでは。それくらい繊細で微妙な空気感が全編を通して流れている。自分>>続きを読む
冒頭から完全に映画的なショットの連続にいきなり引き込まれる。セリフも少なく筋立てもシンプルで、ほとんど"狩る"か"狩られる"かのアクションで魅せる超ストイックな作品。雄大な自然を自然光のみで映し出す映>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
とても地味な西部劇だけど良かった。ひたすら移動に次ぐ移動で、ライカート得意のショットが冴え渡っている。開拓者一行のどうにもならない不安ーー信用できない男ミークと、信用できない(というより文化も言語も道>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
今まで観たケリー・ライカート作品の中では一番好き。「若い女性と一匹の犬によるロード・ムービー」というジャンル性を解体するように、物語の大半は犬不在の中停滞している。シンプルな内容ながらこういう裏切りが>>続きを読む
ひたすら面白かった。正しいアクション映画、正しいエンターテインメント。続編公開されますように。
なるほど"ひたすらパスティーシュ"といった感じで、映画が好きすぎる人の第一作目っぽい!と思って観ていたが、最後まで通して観てみると、実は緩やかに型やジャンル性を解体していくような作品になっていて気持ち>>続きを読む
他人とは違う個性を発揮して自分だけの役割を見つけ、主役として何かを成し遂げなければならないというプレッシャーと葛藤の中でもがき続ける人々への皮肉とささやかな肯定。
選択肢と情報が多すぎてあっちへふら>>続きを読む