daitenさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

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大都市の夜。話せば話すほど関係は空回りし、饒舌な言葉が相手も自分も傷つける。女と男を立ち竦ませる夜の闇。ふと自分に向き合うと聞こえる、か細く震える心の声。そんな声には従いたくない。でも、この夜が明けた>>続きを読む

河口(1961年製作の映画)

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勝ち気で幼い、あだっぽい魅力を放つ女。性はあっても愛はない関係に絡まりながら前へ進む姿は、気高く、可愛らしい。実業に身を入れろと説く男との奇妙な関係が、少しずつ女の成長を促す。流れ着いた、美とカネは等>>続きを読む

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)

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スクリーンを見つめるしかできない映画がある。戦争に翻弄されたとか、永遠の愛とか、手垢のついた言葉では辿りつけないマリアの生きざま。抱かれた瞬間に火照りを感じ、廃墟を映すうつろな眼差しに凍る。混乱の時代>>続きを読む

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)

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無名の場所で乗っては降りる。行き先は決まっているのに迷子になりそうな物語。時折見せる子どもに還った表情に、父への思いを感じる。旅の理由も孤独のわけもわかる。だったら陽子の気持ちはなぜわからない?終始画>>続きを読む

神回(2023年製作の映画)

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繰り返す時間に閉じ込められるのは、主人公だけでなく観客も。抜け出せるか、抜け出せないか。おかしみと妄想が入り交じる学園サスペンスに乗せられる。無間地獄と思いきや、この時間が終わらない理由がわかったとき>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

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頭の奥底に押し込めていた「あり得た自分」。税金未払いの恐怖で覚醒し、脈絡なく現れてはダダ漏れしていく。とんでもない平行宇宙に連れて行かれそうで、最後は家族の再生に着地する、奇妙な安心感。それはそれで楽>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

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死の深淵を覗き、生の根源に到達せんとする覚悟の旅。イマージュは横溢し、重力から解放された身体は自在に沈みこみ駆けあがる。楽しみも苦しみも、希望も絶望もいつかは終わる。それでも次の世代は、手渡された「困>>続きを読む

1秒先の彼(2023年製作の映画)

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忘れていても、いつか思い出せる。そう信じる物語は明るい。ダメ男の恋の鞘当てがとにかくおかしい前半。一変する後半は、1秒前と1秒先を相殺する世界。おまけの時間で、大切な思い出を作ろうとする健気さ。彼岸と>>続きを読む

さすらいの恋人 眩暈(1978年製作の映画)

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薄氷のように、いつ割れてもおかしくない恋。性の営みをカネに変え、浮かれ街に紛れた恋人たちは、かりそめの幸せを貪りあう。都会の公園で濡れ、故郷の海を思い浮かべて絶頂を迎え、最後は涙を流す。「わかれうた」>>続きを読む

君は放課後インソムニア(2023年製作の映画)

5.0

やさしい気持ちになる映画。でもそれだけじゃない。同志のような出会いをした高校生ふたり。互いを補うことで、少しずつ距離を縮めていく。他者を信じて身を預ければ、前に進める。穏やかな能登の夏、自分の殻を抜け>>続きを読む

渇水(2023年製作の映画)

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身も心も渇いている。滞納する人も水を停める人も、どちらもカラカラの生活によどんでいる。緩慢に追い詰められる姿はリアル、親に捨てられた姉妹の姿は胸に迫る。表情とセリフで物語は進むが、水のないプールのよう>>続きを読む

女の中にいる他人(1966年製作の映画)

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背を丸める男の後ろ姿。最初のカットからぞっとする。世間ばかり気にする男。告白で一瞬こころが軽くなるが、すぐ泥沼に堕ちていく。真実を知り戻れなくなった妻。暮らしを守るため、罪の連鎖に巻き込まれていく。終>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

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誰にも言えない。理解されない。だから嘘をつく。悪気はない。そうするしかない。でも、やがて嘘は伝搬し、空気を歪め、人を追い込み自分を追い詰める。人の姿がモンスターに見える世界。それでも、生きる。生きて欲>>続きを読む

水は海に向かって流れる(2023年製作の映画)

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一生恋愛しない。なら僕もしない。涙は出ない。だったら代わりに泣く。“捨て子”のふたりが互いに心の傷を知った時、違和感は共感に変わり、過去を乗り越える旅が始まる。関係性の説明が多く、諧謔もやや不発。イン>>続きを読む

マルサの女(1987年製作の映画)

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人間の“面構え”って何て魅力的なんだろう。次々と現れる人生の履歴書のような顔、顔、顔。カネに狂った男と、仕事に捧げた女。敵対するようで同じ根を持つふたりの知恵比べを、シャープな映像と動悸のリズムが囃し>>続きを読む

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい(2023年製作の映画)

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自分の言葉は人を傷つける。だから自分が大嫌い。心のなかで反芻する呪詛は、ぬいぐるみに話しかけることで声となり、翻って刃を向ける。交わること、嫌われることは痛く、つらい。そのことを受け入れた上で生きてい>>続きを読む

わたしの見ている世界が全て(2022年製作の映画)

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いま終わらせたい妹と、結論を先送りしたい兄兄姉。無計画な増築を重ねた店で奏でる、音色の合わない四重奏。憎まれ口の応酬、考えることもバラバラ。なのに妙に同じ方向を向く瞬間が微笑ましい。会話のアンサンブル>>続きを読む

田園に死す(1974年製作の映画)

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映画ってサーカスみたいと思う。暗闇に包まれて始まる非日常。異形の宴に身を委ねると、いつしか心の底のフタが開き、過ぎ去りし記憶の断片を拾い集めている。過去といま、地続きのようで断絶していて。思い出はいつ>>続きを読む

さらば箱舟(1982年製作の映画)

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時間がわからない。どこにも行けない。そもそも隣町なんてない。貞操帯はとれない。いよいよ名前もわからない。濃密な性欲に満ちた嘘空間から入り、死と生の不可思議なリアリティで抜ける。終わりも始まりも曖昧な百>>続きを読む

帰って来たヨッパライ(1968年製作の映画)

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射殺される時はどんな顔?戦地に送られたらどうなる?遠い国の戦争。死の想像は日本人には妄想、韓国人には現実。わかり合えないものも、強引に着せ替えたら目が覚めるかも。何なら時間も巻き戻し、幾度でも悪夢を見>>続きを読む

ションベン・ライダー(1983年製作の映画)

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いったいどこまで走り続けるのか。噴き出すのは、得体の知れない無謀なエネルギー。男も女もどうでもいい!中学生たちの命懸けの運動会。水に濡れてはリセットし、流行り唄を歌っては生を確かめる。西へ!西へ!どの>>続きを読む

夏の妹(1972年製作の映画)

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“沖縄の妹”の奇妙な冒険譚。まだ見ぬ兄を探して街の賑わいから一歩奥に入ると、“複雑な関係”が擬人化された大人たちが感情を溜め込んでいる。殺したいほど憎く、殺されたいほど謝りたい。もつれた糸を解くのは若>>続きを読む

晩菊(1954年製作の映画)

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老いに差しかかった女たち。咲き誇った時分はとうに過ぎ、日々の暮らしは不機嫌だ。それでも子供たちは勝手に親離れし、かつての男はもう輝かない。判っていたけど、踏ん切りをつけないといけない。そんな心模様が繊>>続きを読む

Winny(2023年製作の映画)

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画期的な技術が善にも悪にも使える時、開発者を罪に問えるのか。無料・匿名のネットカルチャーを社会は許容すべきか、否か。天才プログラマーと弁護団の交流、法廷での問いかけは見応えがあった。「誰かのせいにすれ>>続きを読む

天草四郎時貞(1962年製作の映画)

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ヒロイズムも滅びの美学も無縁。処刑に創意工夫を求め、拷問を楽しむ体制側の描写が容赦ない。一方で民衆のリーダーは一向に冴えなく、突如現れた浪人のアジ演説や蜂起のため家族も殺す狂信的な行動が、全員を死に向>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

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その男は震えていた。過剰な力に慄くように見えた。バイクは疾走し、跳躍は天高く、血飛沫は容赦なく。アクションは生理的快感で溢れている。内省的で自己完結したもう一つのセカイ。異形の生物との戦いが賞賛される>>続きを読む

硝子のジョニー 野獣のように見えて(1962年製作の映画)

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あ、素足だと思った。ここで映画の世界に摑まれた。すがっても噛みついても、愛する男は去っていく。倒れては起き上がり、生きようとした女。さすらいが胸に迫る。荒れた日々のなか、女と男が心を通わせた一瞬。そこ>>続きを読む

さくらももこワールド ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌(1992年製作の映画)

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好きな歌で、思いっきり絵を描きたい。想像の翼は広がり、色とりどりの生命が吹き込まれる。描くのは、未来を夢見るまる子と、夢を諦めるもうひとりのまる子。自分の“好き”をどこまで絵に込められるか。創作の原点>>続きを読む

Single8(2023年製作の映画)

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ただひたすら映画を撮りたい。8ミリに燃える高校生に寄り添い、好きを貫くこと、手作業の楽しさ、ヒロインへのせつない想いを素直に描いていく。物語は見事なまでに、寄り道なし。ノスタルジックな気分にも思いのほ>>続きを読む

零落(2023年製作の映画)

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自己中心、自意識過剰、才能あるのは自分だけ。「自」しかない漫画家の男は、堕ちているように見えて、その実何も変わらない。デリヘル嬢との逢瀬も、カネのある男にだけ都合の良いファンタジー。繰り返される海も感>>続きを読む

少女は卒業しない(2023年製作の映画)

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卒業という終わり。積み残した想いは、自分で決着させないといけない。小さくてかけがえのない高校という世界。最後の2日間、先送りにしてきた感情を言葉に乗せ、本当の気持ちを伝えようと苦悶する4人の姿が胸に迫>>続きを読む

ちひろさん(2023年製作の映画)

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彼女はそこにいる。酸いも甘いも、感情を濾過したような姿で。あけすけのようで、繊細に仕舞われたこころの穴。怯んだり沈んだりする人たちは、彼女に引き寄せられ、目を逸らしてきた自分の穴を見る。怖くないよ、味>>続きを読む

さびしんぼう(1985年製作の映画)

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ぶーらぶらの悪ガキは、母との距離が妙に近いひとりっ子で、カメラでしか女の子を見つめられない16歳。滑稽と純情、息子の恋と親の愛は混じり合い、尾道というノスタルジーに包まれてセピア色の光を放つ。封切り時>>続きを読む

17才 旅立ちのふたり(2003年製作の映画)

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時代からちょっと外れた船溜まりの街。厳しい境遇の子どもたちが出会い、そして別れて。主役のふたり、正直セリフ回しで精一杯。それでも映画のなかを生きた感覚が残る不思議。里親、教師、実の親と、地に足のついた>>続きを読む

日本一短い「母」への手紙(1995年製作の映画)

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母であることを捨てた女と、母を乞う気持ちを封印した姉弟。宛てのない手紙から始まる物語は、距離が縮まるごとに不在だった時間の重さがのしかかる。交わらない感情は丁寧に描かれ、ウェットなテーマと思いつつ、読>>続きを読む

すべてうまくいきますように(2021年製作の映画)

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自分ならどうするだろう。 そう考えながら観ていた。父の願い、叶えたいけど引き返したい。引き留めるタイミングはいくつもあるのに止められない。親の終活という重い決断を、アップテンポな日常で下す現実。50代>>続きを読む