daitenさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

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野菊の墓(1981年製作の映画)

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ちょっとした仕草に込められた恋心が、一見古めかしい物語を輝かせる。雑巾がけのおふざけ、前掛けにしまう手紙、近づけないふたりの距離。細部は積み上がり、恋する高まりと、離されるせつなさが伝わる。小さな話だ>>続きを読む

キネマの天地(1986年製作の映画)

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虹と光にあふれる撮影所。次々と生まれる夢のかけらに業界の青春を感じる。一歩外に出るとそこは現実。夢破れ、なけなしの銭で夢を買う大衆がいる。映画の眼差しはいつも外に向けられ、新人女優は外の世界を背負い成>>続きを読む

そして僕は途方に暮れる(2022年製作の映画)

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頭が真っ白なまま脊髄反射すると、碌なことがない。逃げているつもりが落ちているだけという、なんとも身につまされる物語。隠せてると思い込むバレバレの挙動不審ぶり、息子の上をいくダメ父の次元大介気取りがおか>>続きを読む

私をスキーに連れてって(1987年製作の映画)

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見つめ合うより、ともに滑り降りたい。はぐれずに、たどり着きたい。同じゴールを目指す若者たち。滑るたびに距離と時間は縮まり、同志のような恋が生まれていく。主観をふんだんに交えた映像は色褪せず、水鳥が羽を>>続きを読む

戦場のメリークリスマス 4K 修復版(1983年製作の映画)

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男たちの殺気に終始張りつめていた。それでもいま思い出す、花、歌、笑顔。極限のなか最後まで“個”として生き、心の思いに従った英国人将校。友愛という種子を受け取った日本人は、ただ死に突き進んだ。衝突しなが>>続きを読む

そばかす(2022年製作の映画)

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自分にはない感情を、いつも相手は求めてくる。友達でいたい、理解されないとわかっていても…。恋愛と結婚で回る世の中で、自分らしい幸せの掴み方を探す30歳。その姿を、映画は柔らかくやさしく描いていく。ユー>>続きを読む

にわのすなば GARDEN SANDBOX(2022年製作の映画)

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箱庭に迷い込む、大人になりきれない女と男。実在するようで注意深く抽象化された街は、遊び場のようなゆるい時間が支配し、歩いても踊っても出口は見つからない。ただひとり、正気と狂気の境目を生きる旧家の婦人が>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

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震災孤児の、塗りつぶされた記憶の扉が開いていく。天変地異の残忍さと、高校生の封印した心がダイレクトに繋がり、制御できない異物となってスクリーンを跋扈する。日常も、生の喜びも、惜しみなく奪ったあの現実。>>続きを読む

冬の旅(1985年製作の映画)

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飢えても汚れても、歩みを止めなかった少女の道行き。どこにも属さず、束縛を拒否する孤独と孤立。出会っては捨てられる旅のなかで、誰かが本気で抱きしめれば、救うことができたのだろうか。凍てつく空はどこまでも>>続きを読む

かがみの孤城(2022年製作の映画)

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日常と地続きのファンタジー。絶海の城は日中限定のシェルター。ひどい現実ならいっそ逃げ出しても構わないことを知る。そして気づく。自分と同じ境遇の人がどこかにいて、私を求めていることを。他者と関わる入口に>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

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強くなりたい。怖い。でも、強くありたい。見つめること、走ることをやめないケイコ。その孤独な姿を観客の私たちも見つめ続けている。言葉ではたどり着けない、心と身体がシンクロした瞬間の“火照り”。柔らかい東>>続きを読む

夜、鳥たちが啼く(2022年製作の映画)

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本当は筆を折りたいのではないか。本当は子どもを捨てたいのではないか。邪悪な心に苛立ち、自傷する男と女。形は見えても“重さ”は感じられない。傷の舐め合いなんて生易しくない、人と人が交じり合う途轍もなさ。>>続きを読む

天国にいちばん近い島(1984年製作の映画)

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幼い16歳。殻に閉じこもり迷ってばかり。でも、ふとした出会いが彼女を少しずつ変えていく。一見幸せそうな人が抱える別れの悲しみ、その深さ。一緒に見たかった景色。自分の至らなさに気づき、ひとの心を思いやる>>続きを読む

野獣死すべし(1959年製作の映画)

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花売りの老女をカネで歌って踊らせる。眼をひんむいて蔑む顔に背筋が凍る。ためらいなき殺人を続ける男。警察を攪乱し、頭脳と身体能力を完全犯罪達成に捧げる姿は、ねじれた万能感に満ちている。安保の時代、右も左>>続きを読む

窓辺にて(2022年製作の映画)

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心の置き場が見つけられない中年の男。かつての自分のような若く尖った才能と出会い、ざらつく気持ちの終わらせ方を探しに出かける。寄り道したり、見つけたと思ったら違ったり。ちょっとおかしく、すこしせつない“>>続きを読む

ある男(2022年製作の映画)

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短くても幸せだった、ある男との日々。それは意味のないものだったのか。中身とラベルのすり替えをめぐるミステリーは、生きた証を探すロードムービーとなり、それぞれの心に沈む澱を容赦なく見せつける。乾きながら>>続きを読む

あちらにいる鬼(2022年製作の映画)

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鬼畜でも文学者なら許される、実話にもとづく愛憎劇。逢瀬を重ねるふたりに作家としての存念は感じられず、のし上がる野心も、裏返しの背徳感も見えない。嘘吐き男と知りつつ耐える妻が印象に残るが、出家まで女を追>>続きを読む

「エロ事師たち」より 人類学入門(1966年製作の映画)

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本能ダダ漏れ。エロとカネにまみれた貧しい世界で、勝手に生き勝手に死ぬ、泥臭くも狂おしい人たち。その生態をのぞき見する、“観察記”のような引いた画面が、粘着するように心に棲みついた。ずぶとい女は家をつぎ>>続きを読む

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)

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ちど殺したら、殺し続けるしかない。でも本当に殺したい人は殺せない。信仰という桎梏、父との確執、女への飢え。死への逃避行は過去と絡み合い、恐ろしい緊張を強いる。無辜の命を奪い自滅する男が、わずかに見せる>>続きを読む

破戒(1962年製作の映画)

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自分のことを覚えてほしい。無様な姿を伝えてほしい。子らの前で戒めを破る市川雷蔵の姿は、痛切でいて気高い。信州の冬のような切れ味鋭い映像。そこに描かれる、自分に刃を向け続ける青年の苦悶。誰もの心に巣喰う>>続きを読む

夜明けまでバス停で(2022年製作の映画)

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まじめに生きてきた人が、バス停のベンチで寝るというのはどういうことなのか。実話の理不尽さに踏み込むふりをして、制作者は“意図”を押し出し、怒りをイデオロギーにすり替える。助けてと言えない人の描き方が短>>続きを読む

急げ!若者 TOMORROW NEVER WAITS(1974年製作の映画)

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ジャニーズはユニゾン。息合わせ、足並みそろえば夢は叶う。地上5センチ浮遊した親しみやすい4人組が、70年代の女子を熱狂させる魅力は分かった気がする。悲劇的な事件のあと、代役のピンスポにあえて入らない郷>>続きを読む

あこがれ(1966年製作の映画)

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泣いた分だけ強くなれればいいのに。気持ちを抑えようとするほどに、こぼれ落ちる涙。愛することがその人を不幸にしてしまうとしたら。ならば諦めていいのか。後悔を重ねた大人たちも迷っている。たくさんの人のなか>>続きを読む

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

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弔いと逃避が入り交じったダチとの旅。道すがら呼び起こすのは、美しい思い出の底に沈むクソな記憶。好きだけど壊れていて、だけど好きで。骨壺を抱き、走り、もがく姿は不思議と凜々しく、逝った彼女が生涯得られな>>続きを読む

背 吉増剛造×空間現代(2021年製作の映画)

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そこに透明な壁があると仮定する。あの日、多くの命をさらっていった、彼岸と此岸の境目のような、澄んだ壁。詩人の情念は色に、生の苦しみは傷に、シャウトする言霊は反射し、通奏低音のような音に乗ってスクリーン>>続きを読む

百合の雨音(2022年製作の映画)

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エロくて、美しい成人映画。紅い傘に滴る雨は背徳の合図。つけ込み、埋め合い、濡れていく。いつの日か挿れるための深爪は、失うことを恐れる臆病な心そのもの。刹那の快楽に痺れながら愛を叫び、ふたりの女は淫らな>>続きを読む

音楽喜劇 ほろよひ人生(1933年製作の映画)

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ステイションでの恋のさやあて。ビールを飲み夢を語っても若きヒットメイカーには敵わない。ドタバタで得た大金も耳栓のごとし。恋敵と彼女の危機を知り、あの憎たらしい“音”で救おうとする。歌、テンポ、ほろ苦さ>>続きを読む

さかなのこ(2022年製作の映画)

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自伝だけど作り話。そう観客を油断させて展開する異形の物語。これしかできない、やりたいからやる。偏執と明るさは紙一重、裏表のない青年を演じるのんの表現力。いつかきっと君は受け入れられる。拒絶され街を去っ>>続きを読む

(2002年製作の映画)

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恩讐を越えて再び結び合う女と男。命を産み出し、同時に奪われる試練に向き合う。いら立ち苦しみながらも前へ進む、その時間は濃密だ。プライベートをさらけ出し、命のやりとりすらネタにする作家の“業”はそれほど>>続きを読む

よだかの片想い(2022年製作の映画)

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飛ぶのが怖い鳥のような女。気遣われ距離を置かれる悲しさを飲み込み、大人になった。初めての男がくれた鏡で覗き込む自分の顔。せつないすれちがいを経て気づく。向き合うでも受け入れるでもなく、何色でもいいから>>続きを読む

(2022年製作の映画)

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道を外れながら道を説く偉そうな中年オジサンをひっくり返したい。ささやかな復讐を続ける20代の女は同世代とつながり、今度はひっくり返される。性交の快楽は気持ちの揺れとつながらずエロスは薄い。むしろ育ちの>>続きを読む

LOVE LIFE(2022年製作の映画)

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なかったことにしてはいけない。愛したこと、見捨てたことを。目を逸らしてはいけない。自分の汚さ、醜さから。正しいことさえ裏切られる大人の世界。白黒つかなくても、受けとめて前へ進む。のぼり、くだり、踊って>>続きを読む

百花(2022年製作の映画)

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許されない過去と愛された過去。繰り返し差し込まれる残像は、受け入れたくない現在と響きあい、母と息子を苦しめる。繊細な音と画で自在に時を越える技巧が目をひく。一方、登場人物は単色、描かれる世界はあまりに>>続きを読む

ビリーバーズ(2022年製作の映画)

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特殊なゲームに興じる男・女・男。何かのプレイを見せられているような、不愉快な時間が続く。カルト教団や戒律はどうでもよく(たぶん)、夢想と夢精に縛られる男の情けなさ、一線を越えて解放される女の健康的なエ>>続きを読む