daitenさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

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アフリカの光(1975年製作の映画)

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流れ流れて港町、荒くれ者に削られる
殴りあうのも愛のうち、抱きあい舐めあい胸焦がす
凍てつく寒さに身を縮め、さりとて彼の地はまだ遠く
いつも心にあの光、行けるとこまでいくだけさ…
男と女の濃密な時間に
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八月の濡れた砂(1971年製作の映画)

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目的はセックスしたいだけ。でも、シフトレバーが折れたくらいでやれなくなる中途半端な弱さ。行き場のない、いや、どこかに行こうとさえしていない無為な夏。社会を目の敵にし、格差に勃起する行き止まりの青春が痛>>続きを読む

青春の蹉跌(1974年製作の映画)

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ぶつかり合い、抱き合い、上になり下になり。生きている手応えを求めて肉体はつながる。拭いがたい虚無を棚に上げ、澄ました顔して豊かな階級に入る。そんな都合のいい話は所詮なかった。最後は自分で自分の肉体にケ>>続きを読む

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)

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友だちの知らなかった一面を発見し、一緒に悪いことするドキドキ。男の子ふたりの好演で、昭和61年の爽やかな夏物語を楽しんだ。ただ、「懐かしいでしょ」と差し出されると身構えてしまう。ノスタルジーは控えめに>>続きを読む

春原さんのうた(2021年製作の映画)

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矩形のなかで喪失を抱える女性。気遣う人たちがいても心を開くことはない。時と場が引き延ばされていく感覚。緻密に調整された映像と音響が、画面を見つめるしなかい無力感をもたらす。風はいつもそこにあった。しか>>続きを読む

ヨコハマBJブルース(1981年製作の映画)

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感情むき出しの攻撃的なブルースが頭にこびりつく。逆光に照らされ暗く煤けた港町を徘徊する、デカくずれのシンガー。狂気と稚気が境目なく混じり合い、不思議な行き詰まり感が画面からにじみだす。気取った物語だが>>続きを読む

三度目の殺人(2017年製作の映画)

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アクリル板ひとつ隔てた絶望。言わせたいこと、言わないこと、言ってはいけないこと。言葉は絡み合い、どこかにある“事実”を探しあぐね路頭に迷う。被告人さえ役割を演じる司法の場で、血塗られた手のぬくもりだけ>>続きを読む

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)

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こんなに愛しているのに伝わらない。こんなに愛されているのに受け入れない。いい歳こいたダメ男の日常は破れた傘のよう。どう差してもビショ濡れだ。それでも家族は傘の元に集まり、風雨が過ぎれば前に進む。ままな>>続きを読む

ニッポン無責任野郎(1962年製作の映画)

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東宝クレイジー2本目の無責任男は、ドジョウのように派閥争いをすり抜け、接待使い込みは接待倍返しで万事解決。前作より歌成分多めだが、胆力と方便でのし上がるサラリーマンに胸スカッ。結婚生活は似合わず、カネ>>続きを読む

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

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仮想空間で心を解き放てば、どんな困難も乗り越えられる。極彩色の映像と裏腹にメッセージはモノトーンだ。物語はテーマを運ぶ道具立て、感情の揺れも答えを知っている問いのよう。夢なら醒めないで…と歌うなら、リ>>続きを読む

今夜、世界からこの恋が消えても(2022年製作の映画)

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寄せては返し、リセットされる恋しい気持ち。永遠の“きょう”を繰り返す理不尽さ。タイトル通りのメロウな物語でありながら、不意にあらわれる行き止まりの感情が苦い。すべての矛盾を引き受け、それでも前に進む古>>続きを読む

恋は光(2022年製作の映画)

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恋してくれた人を恋するか。恋した人に恋してもらうか。ダンスもエロスもない令和のモテキは、今風のアップテンポな会話劇で恋のさや当てを心地よく魅せる。衒学的な装いは目くらまし、小理屈をこねる草食男女を自然>>続きを読む

風の歌を聴け(1981年製作の映画)

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僕と鼠、ビールとピーナッツ、小指のない女の子と双子。神戸とカリフォルニア。ふたつの世界を往復し心の奥底に降りていくハルキワールドの、(饒舌で)真っ直ぐな映画化。僕はいまどこにいるのだろう。自分の足下を>>続きを読む

ニッポン無責任時代(1962年製作の映画)

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社長以外はサラリーマン。辞表なんか出しちゃダメ。C調とか何とか言いながら、即行動で見事ヘッドハンティング。働きマンで物怖じしない無責任野郎の姿は爽快そのもの、その他大勢のマジメな勤労者への励ましも。公>>続きを読む

濡れた荒野を走れ(1973年製作の映画)

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腐敗した警察が支配する世界で、精神病院から脱げた元刑事の狂気を見抜こうとする刑事たち。見ているのは汚れた自分の姿だ。家出常習の女子高生と元刑事の逃避行。薄暮差す湖畔の光景は白昼夢のように淡い。レイプと>>続きを読む

東京2020オリンピック SIDE:B(2022年製作の映画)

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五輪は是か否か。コロナ禍が突きつけた残酷な選択に直面し、呻き傷つく分断の記録。日本社会を被った禍々しい空気を映画に刻もうとする強い意志を感じる。理不尽な現実を受け入れ、解のない苦しみを糧とする。単純に>>続きを読む

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

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幼い命を売る一行と追い詰める刑事。どちらも、手に入らない幻想の“家族”に囚われている。行く先に希望はないと知りながらの、緩く生温かい旅。ふいに訪れる“家族らしさ“に、深く暗いそれぞれの絶望を知る。最後>>続きを読む

花影(1961年製作の映画)

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かりそめの愛を囁く男たちと、嘘を飲み込み客商売に生きる女たち。銀座のバーは情愛の上澄みを啜る止まり木。本気はいけないと知りつつ、抱きしめられよろめく姿が凜として哀しい。月夜が照らす一面の夜桜、闇へと歩>>続きを読む

その場所に女ありて(1962年製作の映画)

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広告の街・銀座。時に闊歩し、時にさまよう27才営業ウーマン。心に鎧を纏い男社会で闘う姿が気高い。仕事と結婚、接待、ハラスメント。今と繋がるテーマも織り込みながら、スピード感ある乾いたタッチで“仕事に生>>続きを読む

銀座二十四帖(1955年製作の映画)

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森繁DJと謎のGMを狂言回しに、花売コニイが駆け抜ける東京銀座の昼と夜。肩で風切る三橋達也、時が止まった月丘夢路、小生意気な都会っこ北原三枝のアンサンブルが爽やか。時折見える戦争の影に、清濁合わせて復>>続きを読む

PLAN 75(2022年製作の映画)

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安楽死を強いる悪魔のシステムが日常に紛れ込み、異様な緊張を強いる。決まったことには従順なこの国の底浅さ、世代間の救いのない断絶が伝わる。ただ、そこに人生は見えたか。老人をステレオタイプなアイコンに押し>>続きを読む

にっぽん昆虫記(1963年製作の映画)

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薄幸な女の、ぬかるんだ人生の記録。カネ、セックス、宗教、そしてカネ。捨てられ裏切られ寝取られる貧しい暮らしのなか、乳を呑ました父への変わらぬ思慕が沁みる。戦争も安保もクソ食らえ。二本の足で生きてやる。>>続きを読む

東京2020オリンピック SIDE:A(2022年製作の映画)

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全貌を伝えるつもりはない。開催を巡り大きな声が飛び交うなか、見つめたのは埋もれる小さな物語。アスリートや家族の思いを集め、その人にとっての五輪の姿だけを伝えた。個人映画の体裁を貫くアプローチは、不幸な>>続きを読む

EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)

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一本の道をバスが行く。暴力的な死に直面し、心を抉られた人たちを乗せて。前に進めば何かが得られるかもしれない。あてなき道行きを、カメラは見つめ、見守り、見送る。道は果てなく、傷が癒えることはなくても、こ>>続きを読む

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

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なぜ地球人のために戦うのか。究極のテーゼを一点突破、全面展開。半世紀前のヒーローが背負う壮大な世界を、思いっきり空想の翼を広げて現代に甦らせた。感情の高ぶりは最小限に、破壊、変身、再生で進む語り口が潔>>続きを読む

落下する夕方(1998年製作の映画)

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曖昧な時を過ごす3人の曖昧な三角関係。他人に興味がなく、感情は平行線。交じり合わず踏み込まないから摩擦も生まれない。むしろ不随になった先輩の無念さが、ワンシーンにも関わらず記憶に残る。映像の力は感じた>>続きを読む

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)

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「コンテ通りで」。言葉にすると逃げてしまうピュアな感覚。思惑まみれのスタジオで闘う若きアニメ監督は孤独だ。スタッフを説得して変えた最終回、王道を捨ててもやりたかったアニメとは何だったのか。プロの誇りを>>続きを読む

秋立ちぬ(1960年製作の映画)

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東京の海は青くなかった。カブトムシもいなかった。銀座裏通りは饐えた臭い。理不尽な大人の世界が少年少女を追い詰める。それでも、手をつないで海辺を行けば不思議と心は通じた。約束を果たせず過ぎたあの夏。いつ>>続きを読む

流浪の月(2022年製作の映画)

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誘拐犯と被害女児ではない。異常者と可哀想な子、でもない。決して許されない関係を結んだ、親への愛着を知らないふたり。互いを照らすにはあまりに弱く淡い光を大切に抱え、ふがいない自分を責めながら、それでもつ>>続きを読む

北の橋(1981年製作の映画)

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映画を撮るということの愉悦、快楽。繁栄と破壊が同居するカオスな都市=パリを、螺旋しながらさまよう女ふたりのフェイクな冒険活劇。映画は物語のしもべではない。あてどなく移動しつづけるショット、喧噪を重ねる>>続きを読む

「さよなら」の女たち(1987年製作の映画)

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あたしって何やってるんだろう。大人たちに転がされ巻き込まれながら、自分に問いかける旅。玉手箱のような刺激的な時間は、ようやく見つけた居場所を自ら壊して終わりを迎える。もう子ども時代には戻らない。ささや>>続きを読む

パリ13区(2021年製作の映画)

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愛で満たされたい。セックスもしたい。でも両方はうまくはつながらない。どうしようもない衝動と後悔を繰り返し、欠けたピースを探す若者たち。どっちつかずの不器用な日常を、鈍色の映像と強いビートの音楽が彩る。>>続きを読む

ツユクサ(2022年製作の映画)

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重いものを背負う50代の女と男に訪れる、恋のさざ波。穏やかな港町の表情と、ちょっとしたギミックが物語を明るく照らす。淡々とした日常なんてありそうでない。歳を取っても心に残る余熱が冷めることはない。沁み>>続きを読む