daitenさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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ツユクサ(2022年製作の映画)

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重いものを背負う50代の女と男に訪れる、恋のさざ波。穏やかな港町の表情と、ちょっとしたギミックが物語を明るく照らす。淡々とした日常なんてありそうでない。歳を取っても心に残る余熱が冷めることはない。沁み>>続きを読む

まごころ(1939年製作の映画)

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親の秘密を覗いてしまった12才の少女ふたり。はじめて知る大人の恋心と、亡き父への思慕。少女たちの揺れる心が繊細に描かれ、戦時下、格差のなかで暮らす大人たちの存念と重ねられる。少女たちの成長を見守るよう>>続きを読む

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)

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家があって、家族がいる。ある時期を濃密に過ごし、いつかは離れ、新しい家族が加わる。包みこむ日常の音、自然の声が、観る人それぞれの家族の記憶をいざなう。封切り時は息子の居心地の悪さに共感し、14年経った>>続きを読む

スパークス・ブラザーズ(2021年製作の映画)

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アネットで知ったスーパーバンドの50年。時代と駆けひきしながら世界を切り拓いていった姿に惚れ惚れ。サウンド&インタビュー&フッテージ&アニメーションを自在に組み合わせ、“もうひとつのスパークス”を密度>>続きを読む

アネット(2021年製作の映画)

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こころとは、これほどまでに孤独で清冽で醜悪なものなのか。抒情的な旋律と歌声に導かれ、愛の深淵に降りていく140分。むき出しの情念は嵐に揺れ、破滅の恐怖を月夜が照らす。拒絶されても想い続ける強さには何物>>続きを読む

女子高生に殺されたい(2022年製作の映画)

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ケレン味あふれる倒錯の世界。理解できない性癖に共感し、身勝手すぎるエロ仕掛けに純愛を感じてしまう、恐ろしくもハッピーな学園サスペンス。美男美女の心に巣喰う魔物のせめぎ合いが、観客に緊張を強いる。タイト>>続きを読む

きらきらひかる(1992年製作の映画)

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たぶん受け入れてもらえない。それでもいいから受け止めて欲しい。荒れた心と戦う女と、性的指向に閉じる男ふたり。宙に浮く三角形の愛は澱のように沈み、溜めて溜めて最後に爆発する。さまよいの果て帰る現実は重い>>続きを読む

やがて海へと届く(2022年製作の映画)

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大切な人を亡くした感覚さえ曖昧なつらさ。茫洋とした海に向きあう姿に理不尽さを感じ入る。端正なフォルムの映画。だからこそ、説話ではなく感情のこぼれる先をもっと共有したかった。見えなかった片面は、死者と生>>続きを読む

見上げてごらん夜の星を(1963年製作の映画)

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またたく星を求め、歌を口ずさみそぞろ歩く。高度成長の影、貧しい生活から抜け出そうともがく若者たちの姿が、明るく時に哀切に描かれる。唯一の従軍経験を持つ伴淳の存在が映画を厚くする。夜の校舎に灯る明かり一>>続きを読む

猫は逃げた(2021年製作の映画)

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盛りのついたネコのように、やることやっちゃってる女と男。仕事と恋、ごっちゃになりながら快楽はちゃっかり味わってしまう軽さ、微温感は心地いい。ネコは子を産み、されどヒトは?“世界でいちばん素敵な恋をした>>続きを読む

姉妹坂(1985年製作の映画)

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4姉妹のうつろう心模様。見つめられ、重ねられ、そらされて。恋する思いは目まぐるしく変わる視線で描かれ、心を通じることの果てしなさを思う。音楽とクロースアップで転調する物語は強引だけど映画的。登場人物を>>続きを読む

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

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シナリオを書き、仲間とカメラを回せば映画はできる。でもそれで映画監督になれるのか。理想をあきらめず、なにより映画を信じること。物語に情熱を込め、未来に逆らうことを決めた時、彼女はみずから映画監督になっ>>続きを読む

グッバイ、ドン・グリーズ!(2022年製作の映画)

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心のなかで何度もループする、自分が自分であるための原風景。走って転んで笑い泣き、3人の15才は心の窓を開いていく。秘密を共有できたらこっちのもの。打ち上げ花火だって横から見られる。コロナ禍の少年少女の>>続きを読む

愛なのに(2021年製作の映画)

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愛はどこにある?手紙のなか、生きた花、それとも二重巻きのナニ?愛がないから下手なのか、み心の思うままに致せば愛なのか。純愛と性欲、やっかいな感情に捕らわれた男と女。真剣になるほど滑稽な姿が独特のユーモ>>続きを読む

時代屋の女房(1983年製作の映画)

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泪壺 溜まるは愛かため息か…蠱惑的な女に振り回される大人のフェアリーテール。時が止まったむっつりスケベを尻目に、潑剌と生き抜く女たちの姿がたくましい。東北からくり珍道中はおかしみ全開。逢えないほどに募>>続きを読む

(1959年製作の映画)

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復興に取り残された元将校の父を、わずかな才覚を頼りに支える娘。様々な世代の思いが重なり、戦後10年余の空気が伝わる。テンポは良く省略も巧み。後半、求婚に心ならずも揺れる娘の姿に目が離せない。渡るか、引>>続きを読む

死んでもいい(1992年製作の映画)

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陵辱から始まり純愛に至る、名美と男の変奏曲。女を自分のものにしたい、どうしてもしたい。独特の映像美で衝動が描かれ、行き場のない強烈な情欲が土砂降りのようにふたりを濡らす。受け身だった女はいつしか魔性を>>続きを読む

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

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きれいに並べられたアルバムに、特別な1日が蘇る。演技巧者のふたりは気の合う恋人そのもの。ビジュアルな記憶のかけらは鮮やかだ。でも、1年前の答え合わせをするより、描かれない364日を想像したい。あれだけ>>続きを読む

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

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歌っても届かないと思っていた。家族でひとり健聴の少女。生活に追われ、見出された才能もいつか諦めるもの。しかし、聞こえない歌声は家族の心の扉を開き、言えなかった思いを知っていく。自分のためでなく、大切な>>続きを読む

Wの悲劇(1984年製作の映画)

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何者でもない自分への焦りと不安。若さしかない女優の卵が、名声のため人生の幕を開ける。名女優を嫉妬させる嘘だらけの“演技”。人を傷つけることも厭わない、罪深いまでの“純真”。名声には届かなかったけれど、>>続きを読む

名付けようのない踊り(2022年製作の映画)

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全身からエネルギーが滲みだしていく。大地の精気を受け止め、脳幹に直接届く肉体の凄まじさ。まず踊りありき、でも踊りは言葉を待っていた。唯一の存在としてのダンスを求める長い思索の旅に、同行させてもらった気>>続きを読む

前科者(2022年製作の映画)

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いま目の前にいる人に、人として向き合いたい。傷ついたマリア様のような保護司の清廉さが映画を牽引する。更生とは生き返ること。ならば未来を変えるため過去は切り離してもいいのか。観客にのみ提供される多くの回>>続きを読む

麻希のいる世界(2022年製作の映画)

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圧倒的な“何か”を相手に感じ、自分の存在を賭けるということ。精一杯叫び、かき分けてでも居場所を作り、昏倒するまで進む。思い込みの感情だけでつながるふたりの世界に、生への渇望を感じた。転調した後半、願わ>>続きを読む

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)

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心の闇を抱える少年が、世界の破滅を目論む異形物と戦う。既視感の強い設定だが、アニメーション技術は高度で疾走感に溢れる。呪われているつもりが呪っていた…初恋の呪いの正体に気づく場面、理不尽な負の感情が呪>>続きを読む

メイン・テーマ(1984年製作の映画)

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どうして?どうやって?なぜなぜ期のような子ども女が、お安いマジックにかかっていく。大人の色香もまぶしながら、上っ面の気分を楽しむリゾート映画という割り切りが心地よい。頭からっぽなヒロインのウブさ、かわ>>続きを読む

早春物語(1985年製作の映画)

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精一杯背伸びした17歳、春休みの冒険。好奇心、憧れ、恨み。感情は空回りを続け、自分への刃として返る様子がいじましい。最後に残るのは、これは恋かも、という思い込み。みっともなく翻弄される中年男を切り捨て>>続きを読む

色道四十八手 たからぶね(2014年製作の映画)

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夫婦二組の艶笑譚。 ミニマムなシチュエーション、無駄のない筋書きで映し出される現代の春画。濃厚に思える性技の数々も、しょせんは紙相撲。土俵の上で男は女に操り続けられる。すべてはつながり、最後はみんなで>>続きを読む

こわれゆく女(1974年製作の映画)

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声にならない声が叫んでいる。空を切る手が訴えている。聞きとれない歌が泣いている。こわれゆくというより、こわれないよう必死で平衡をとる痛々しさに満ちていた。愛と支配、依存と孤独。狂気という言葉すら生ぬる>>続きを読む

君は僕をスキになる(1989年製作の映画)

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女子ふたりの恋する気持が軽やかにすくいとられる。陸橋を駆け上がるたびに、恋のステージが上がる。スキなのは違うひと…視線の交差だけで描ききるダンスシーンに心が弾む。バブル時代の大げさ感は正直過去。だけど>>続きを読む

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

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人間、いくつになってもチャンレジできる…言葉にすると気恥ずかしいことも、ストレートに感じさせてくれる、これぞ映画。シンプルなストーリー、動と静の織りなす映像美、そして全身からにじみ出る人生の年輪。 老>>続きを読む

なん・なんだ(2021年製作の映画)

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妻の秘密にうろたえる初老の男。本人は真剣でも見た目は滑稽、憎む相手からは施しを受け、妻は皮肉にも若返っていく(ように見える)。哀れな日常もどこかおかしく、人間らしいと思う。カメラが男から離れず陰惨さで>>続きを読む

浅草キッド(2021年製作の映画)

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タップの響きに導かれる師弟の濃密な時間。うらぶれた小屋で伝えられる芸とプライド。笑われるな、笑わせるんだ。弟子はビートのある毒舌漫才に賭け袂を分つ。誇りか妥協か。土壇場を支えたのも、身体に染みついたタ>>続きを読む

明け方の若者たち(2021年製作の映画)

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“何にでもなれる気がした”20代のスケッチ。いわくつきの恋ならば、お互いもっと沼に追い込まれ、うずくまり、かけずりまわる姿が見たくなる。夜明け前はいちばん暗い。ノスタルジーで化粧するのではなく、リアル>>続きを読む

あ、春(1998年製作の映画)

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箱庭のような家で夫婦が鬱屈している。そこに現れた、死んだはずの夫の父。招かれざる客は澱んだ家に風を吹き込み、箱庭に命を灯していく。生まれてすぐ死ぬひよこのように、幸せと不幸せは紙一重。生き様と死に様、>>続きを読む

女ばかりの夜(1961年製作の映画)

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教条的な冒頭から一転、夜の女たちの自立を求める格闘がエネルギッシュに描かれる。善意と偏見が裏表の社会に対する映画の眼差しは冷徹だ。性を売ることでしか男の優位に立てないつらさ。時に溺れながらも、乗り越え>>続きを読む