Junさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

羅生門(1950年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

緊張感を持続させる異常なまでに長い間と、場面が切り替わる度に存在感を増す雨が印象的だ。検非違使が姿を現さないのも不気味で良い。
三者三様に証言が食い違う物語は、人のエゴイズムを浮き彫りにしているとも取
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キリエのうた(2023年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

主役を務めるアイナ・ジ・エンドの唯一無二の歌声と広瀬すずが持つ透明感の魅力に彩られた映画。悲劇性を纏う物語は刹那的な熱を帯びており、ダイレクトに感情を揺さぶる歌唱シーンには思わず息が詰まりそうになる。>>続きを読む

銀河鉄道の夜(1985年製作の映画)

4.2

交わされる詩的な会話と瑞々しい映像、神秘的で無国籍性をたたえた音楽が美しく、原作同様に観る者の心に響く傑作アニメーション。孤独な心を抱え生きていかなければならない現代人にこそ刺さる。無情な絶望と喪失感>>続きを読む

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版(2014年製作の映画)

3.8

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「コワすぎ」シリーズ6作目にして満を持して(?)の劇場版である。前作の序章から次いで登場する浄霊師の道玄に落ち目のアイドル・小明と物理学者の斉藤を加え、一行は「タタリ村」へ足を踏み入れる。過去作に登場>>続きを読む

アリスとテレスのまぼろし工場(2023年製作の映画)

4.7

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『さよならの朝に約束の花をかざろう』に続く岡田麿里監督第2作。前作とはまた大きく異なる物語の切り口と主題の多角的な深さに度肝を抜かれた。

製鉄所の爆発事故を境に時間の流れが止まってしまった町。共同体
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戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 劇場版・序章 真説・四谷怪談 お岩の呪い(2013年製作の映画)

3.6

次作の劇場版へ向けた序章に位置する戦慄怪奇ファイル コワすぎ!シリーズの第5作。
今回の題材はみんな大好き(?)四谷怪談、そしてお岩さんである。独自の解説を辿りながら、あれ、そんなだっけ?と思いつつも
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戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-04 真相!トイレの花子さん(2012年製作の映画)

3.9

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戦慄怪奇ファイル コワすぎ!シリーズの第4作。
ここまで観てきたエピソードの中でも突出して面白かった。以前より某アニメ諸作品の名前が関連に挙がっているのを目にしたが、このタイムトラベル要素はなるほど…
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戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-03 人喰い河童伝説(2013年製作の映画)

3.4

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戦慄怪奇ファイル コワすぎ!シリーズの第3作。
今作の捕獲対象は高い俊敏性と人を引きずり回すほどの怪力を持つ河童である。上半身裸の工藤がこれをタコ殴りにして捕まえようとする姿に視聴者は笑えばいいのか、
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劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)(2023年製作の映画)

4.2

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公式サイトにて「最終章〈ファイナルチャプター〉へ!」と謳われているように、映画内容は最後の闘いに向けた序章といった位置付け。作品の総決算としては前作『新宿プライベート・アイズ』がかなり満足度の高い作品>>続きを読む

ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985年製作の映画)

3.2

『神田川淫乱戦争』に続く黒沢清監督第二作。日活ロマンポルノとして企画されたが配給を拒否され、再編集後に一般映画のレイティングで公開されたとか。改変される前のタイトルは「女子大生 恥ずかしゼミナール」。>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

村の風習に若者が巻き込まれるホラーと言えばそれ程新鮮味を感じないが、画面全体の明るさが特徴的な本作は、夜を迎えることのない白夜の下繰り広げられる狂気がまるでドラッグを差し出されるかのような感覚で描かれ>>続きを読む

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-02 震える幽霊(2012年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

戦慄怪奇ファイル コワすぎ!シリーズの第2作。
投稿映像から調査と変わらない流れを踏襲しつつ、前作のキーアイテムだった呪いの髪飾りの再登場や会話の中でサラッと触れるディレクター工藤の生い立ちに関する情
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戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-01 口裂け女捕獲作戦(2012年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

モキュメンタリーを得意とする白石晃士らしい作風。いつの間にこんなにシリーズ作の数を重ねていたのかと興味が出て鑑賞。
ホラーと言うよりオカルトと呼ぶのがしっくりと来る。扱っている事象や関係者の胡散臭さが
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息子のまなざし(2002年製作の映画)

5.0

全編に渡って映像からひりついた情動を感じる圧倒的なフィルムだ。長回しを基調としたカメラワークは物語の主軸となる一人の男の姿をリアルに描き出し、言葉にならない葛藤を観る者へ同時に体験させる。虚飾のない会>>続きを読む

TUBE チューブ 死の脱出(2020年製作の映画)

3.8

ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の名作『CUBE』を彷彿とさせる邦題だが、描かれたテーマは死生観に基づく魂の救済のプロセスを可視化したようなものと受け取れる。登場人物たちの名前からも宗教に根ざした物語である>>続きを読む

MEG ザ・モンスターズ2(2023年製作の映画)

3.9

ぶっ飛んだ作風で前作とはジャンルが変わってしまったが、異色サメ映画の傑作と言っても過言ではないかもしれない。中盤にかけて割と真面目に海洋アドベンチャーしていたかと思えば深海より浮上してからはギアチェン>>続きを読む

フルートベール駅で(2013年製作の映画)

4.2

2009年元旦に起きた「オスカー・グラント三世射殺事件」を題材にした作品。無抵抗の黒人男性が警官に射殺されてしまうまでの人生最後の日が描かれている。実際に地下鉄の乗客が撮影した映像が冒頭に配されている>>続きを読む

ライムライト(1952年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

生に対する愛が満ち溢れた好編。胸を打つ言葉が随所に差し挟まれている。

喜劇と悲劇の調和した物語は上手い具合に互いを引き立てている。老芸人カルヴェロが臨む最後の記念公演は、チャップリンとキートンが同じ
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共犯(2013年製作の映画)

3.8

前半のミステリー然とした立ち居振る舞いから一転、後半は少年少女の心の内を暴く青春劇にシフトする構成が面白い。願ったのはほんの些細なことだったにもかかわらず、訪れた結末はあまりにも救いが無い。転落死に至>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

4.4

過激で派手だけど緻密に計算されたアクションシーンに隙が無い。ローマの街を駆け抜ける壮絶カーチェイスから列車アクションまで存分に楽しませてくれる。AIの暴走を描くストーリーは今となってはやや新鮮味に欠け>>続きを読む

バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版(2022年製作の映画)

3.5

ドラマ未視聴でもすんなり観ることができた。一部メインキャストには疑問を抱くが、事件に関わる人物たちを含めて役者たちの演技は安定していて良い。筋立ても本家の要素を断片的に利用して上手く纏められている。>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018年製作の映画)

4.3

裏のかき合いで話がどう転ぶか判らない様にハラハラするのはまさにスパイ映画の醍醐味と言っていい。捻りの効いた物語としての強度の高さが中盤まで感じられ、怒涛のアクションを畳み掛ける後半部といい、長尺ではあ>>続きを読む

ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション(2015年製作の映画)

4.4

恒例の入りを逆手に取ったミッションの導入からオチまで目まぐるしく展開されるストーリーがお見事。敵か味方か判別の付かないレベッカ・ファーガソン演じるイルサも良いアクセントになっており、まさに走り通しの驚>>続きを読む

薔薇の名前(1986年製作の映画)

3.8

中世の修道院を舞台に起こる不可解な連続殺人事件を描いたミステリー。
西欧文化や宗教への理解がないと動機などやや不明瞭に感じられる面はあるかもしれないが、修道院という閉鎖的な空間に漂う男たちの淫らな欲望
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キラーカブトガニ(2021年製作の映画)

2.8

サメの時代に終止符を打つべく、新たなモンスターが姿を現した。その名はカブトガニ…。

誇大な広告に対して肝心の中身はと言うと、丁寧に作られた安っぽいB級映画。途中からの舵の切り返しが予想外で意表を突か
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チケット・トゥ・パラダイス(2022年製作の映画)

3.7

基本的に悪人が居ないので安心して見ていられるロマンティック・コメディ。ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツ、名優二人の小気味良い掛け合いが楽しく、頭を使わずに楽しめる作品を探しているときなんか丁度>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

イマジネーション溢れるスタジオジブリ版「不思議の国のアリス」といった印象。物語らしい筋立ての楽しさはさほど感じられないが、落ちて以降の想像力の限りを尽くして襲い来るアニメーションの筆致には圧倒される。>>続きを読む

独裁者(1940年製作の映画)

4.0

軽快なテンポで描かれる数々のドタバタで笑い、注目を引き付けた上で最後の有名な演説シーンである。ファシズムを否定し民主主義を守ろうと訴える内容が、時代が移り変わった今も尚、強烈なメッセージ性を放っている>>続きを読む

めまい(1958年製作の映画)

4.2

極上の心理サスペンスであり、思わず身震いのするラストシーンはまさに衝撃の一言。繰り返しの視聴に耐えうる高密度な脚本はサスペンス映画の教科書と言えるだろう。「高所恐怖症」を活かした殺人トリックは今観ても>>続きを読む

ザ・グリード(1998年製作の映画)

4.1

B級映画としてなら満点に近い点数を献上したいほどよくできた海洋モンスター・パニックムービー。シンプルであり無駄のないストーリー展開、個性的で魅力溢れるキャラクターたち、軽妙な台詞回しと名言「お次は何だ>>続きを読む

ドニー・イェン/COOL(1998年製作の映画)

3.5

言わずと知れたアクション俳優ドニー・イェンが監督・主演を兼ねた意欲作…ではあるが、難航した撮影話やら資金を持ち逃げされたエピソードもあり、ファンの間からも曰く付きの作品として語られている本作。見せ場と>>続きを読む

The Witch/魔女(2018年製作の映画)

3.9

漫画やライトノベルで繰り返し語られたような世界観を惜しげなく煮詰め、サイキック・アクションエンタテインメントへと昇華せしめた快作。奇を衒った結果、複雑で難解な展開を見せられるよりよほど良い。主人公ジャ>>続きを読む

ブラック・デーモン 絶体絶命(2023年製作の映画)

2.4

サメも爆弾も存在感が薄く、それでは何がメインかと言うと人間ドラマが主体となっているが、全体的に地味。誇大な予告編からスリリングな展開を期待すると肩透かしを食うかも。現実的な根深い環境問題やアステカの伝>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.2

不穏な空気感と居心地の悪さを携えて突き進むシナリオ。多角的に捉え直すことで浮かび上がる真実の何と異様な光景なことか。「怪物だーーれだ?」の問い掛けは隠喩であるが、表面上からは見えない暗影にひそむものと>>続きを読む

映画 五等分の花嫁(2022年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

五つ子ヒロイン×ラブコメディ完結編となる映画版。

長尺を用いてマルチプルに描く文化祭の構成が見事だと思う。積み重ねられた過去の出来事から現在点に至るまで丁寧に紡ぎ繋いでいき、ヒロインたち個々のドラマ
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デイ・アフター 首都水没(2007年製作の映画)

3.4

邦題が示す通り、ロンドンが洪水に襲われるディザスタームービー。DVD版だと3時間を超す尺である。

未曾有の危機に人々が立ち向かう姿はさながら災害発生時のシミュレーションのような側面を併せ持ち、淡々と
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