六四二さんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

六四二

六四二

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私、君、彼、彼女(1974年製作の映画)

3.9

アケルマンのことを癖が強く精神の危うい作家だと印象が定着してしまったが、それでも3パートの展開があり、漏れ聞こえてくる音楽もある。多少は馴染みのある映画の世界に近いものだ。
アケルマンの映画手法にとて
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故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)

3.1

画面に映っているのがニューヨークであることを知らずに見ていた。インスタグラムに上がるようなタグの付いた景色ではなく、ニューヨーク在住者が日常目にする光景がこの映画の主体である。
離れて暮らすニューヨー
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街をぶっ飛ばせ(1968年製作の映画)

3.0

気狂いピエロにどれほどの影響を受けたか、この小作品からあふれ出ているように感じる。
2023年に生きる者の目で見ればいくらでもネットに上がっていそうな内容である。シャンタルアケルマンの処女作らしく、ク
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Single8(2023年製作の映画)

4.1

懐かしいシングル8フィルム。
劇中で高校生たちが撮った「タイムリバース」を学祭で上映した次の年に、まったく同じことを私も体験していた。彼らの100分の1くらいの出来でしかなかったが、それでも楽しかった
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ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

3.9

アケルマンの作品を2本見て、映画というものが
何なのかよくわからなくなってきた。
カメラが回るその場所へ見る者を強制的に引きずり込む装置として、この作家は映画を使っており
曖昧さのない絶対的な感覚の受
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東から(1993年製作の映画)

3.0

80年代のいわゆるヨーロッパ東側諸国
社会主義陣営で生活する市民を淡々と撮っている…
だけ。
いっさい演出なし、説明なし
土門拳か!と突っ込みたくなるが絵になる一瞬を狙ったりしない。
なんの群衆なのか
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パリタクシー(2022年製作の映画)

3.9

パリを車で流した雰囲気に浸るだけで気分が上がる。そして婆さまとドライバーが打ち解けていくにつれてこちらも一人の女性の人生に聞き耳を立て、相槌を打つようになぅているのだ。ガンプのようでもありグリーンブッ>>続きを読む

春の夢(2016年製作の映画)

3.9

女性一人に三人のダメ男。
ダメ男の括りには自分も入っている。

贅沢にモノクロ撮りだ。
彼らが住む街は大きく二分されている。
発展している区域とそうでない区域。
錦糸町かい?
当然、そうでない区域に彼
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なまいきシャルロット(1985年製作の映画)

3.5

拗ねて泣いても、親父にくちごたえしても、憧れの人を見つめていても、何をしても可愛い14歳のシャルロット。妹分ルルが野原で踊るシーンも愛らしく自分映画史の名シーンとして焼きついた。

群山:鵞鳥を咏う(2018年製作の映画)

4.1

日本の統治時代…
朝日毎日系の太平洋戦史観を吸収した身にはざわつく響きだが、韓国の群山にその名残が濃くあるらしい。そういうややこしい所で映画を撮るところにチャンリュルの秘めた闘志を感じるのだ。
ソダム
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TOKYO EYES(1998年製作の映画)

3.0

吉川ひなのを見ただけなら、映像の傷は作為的なものであり、年代を感じる小道具や時代の雰囲気がよく出来ていると思うところだ。実際、はじめの何分間かは25年も前の映画とわからなかった。
カーウァイをやりたか
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福岡(2019年製作の映画)

4.0

濱口氏がドライブマイカーでやっていた多言語による演劇の一端をさらっと見せてくれる。チャンリュルの映画ではさらっと論理の飛躍が行われ、心霊現象を見ているようでもある。
地名のシリーズを一連で見ると面白い
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生きる LIVING(2022年製作の映画)

3.5

主演のビルナイが見事にハマっている。
志村喬とは違いスマートな峻厳さを醸し出していた。
歌が上手いところも違うか。
生きるを特徴づけている部下の思い出語りのカットバックのくどさや、主張をはっきりと台詞
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慶州(キョンジュ) ヒョンとユニ(2014年製作の映画)

4.0

チャンリュルのマジックは強力で依存性がある。
土地のもつ気をとらえそこで暮らすひと、訪れる異邦人を巧みに組み合わせ幽玄の映像を作り出す。
大人が楽しむ映画と言えるだろう。
別れる決心のパクヘイルにいい
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トリとロキタ(2022年製作の映画)

3.5

生まれた国、生まれた家で決定的に違ってしまった何かによって真っ当な社会から弾き飛ばされたトリとロキタ。底なし沼にハマりヒルやダニに寄生されてもがく二人の子供にヒーローは現れない。
この容赦ない冷徹さは
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オットーという男(2022年製作の映画)

3.5

グラントリノと重ねてしまう。
常に不機嫌な老人に、手を差し伸べるのがお節介な歳下の移民女性という点も共通している。
男の歳のとり方を学べる映画だ。
タイトルはビッグハートのほうが良かったのに

雑魚どもよ、大志を抱け!(2023年製作の映画)

4.0

原作は監督が長年暖めてきた自分の鳥取での青春譚を元にしている。これを80年代後半、飛騨古川に舞台を変えて撮った力作である。
いろんなやつが出てくる。「悪童日記」というタイトルが浮かぶもこれはこれで本が
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ちひろさん(2023年製作の映画)

3.5

腹の減る映画なのでダイエット中ならご用心。期待していた今泉ブシが出て来ず物足りなさを感じた。ひょっとして今回、封印したのではないかという気がしてきた。原作の世界観の尊重というやつだろうか。
自身フラス
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ロストケア(2023年製作の映画)

3.6

分かりやすい演出でありながら映画が三文芝居になってしまわないのは、松山ケンイチの放つ凄みのせいだろう。多くの人に見てもらうことを前提とし、難解にならないよう配慮されている。多くの人がいずれ直面するであ>>続きを読む

The Son/息子(2022年製作の映画)

3.6

包容力ゼロの父親をヒュー・ジャックマンが好演する。彼を含めて彼の居る世界全てが気詰まりして耐え難い。エリートではあるが大味な生活を積み重ねている様子が絶妙に伝わってくる。パターンしか喋らないんだと、ギ>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.9

仮面ライダーがちゃんと2人出てきて、本郷が一文字に何かを託して…という筋書きが、リアルタイム世代を泣かせる。
いらいろな格闘場面の見せ方もシン仮面らしくて悪くはない。(トンネルとアジトは暗すぎるけれど
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デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム(2022年製作の映画)

4.0

ブレット・モーゲンの巧みな編集により、劇場にボウイのインスタレーションが出現する。IMAXならば完璧で実に刺激的である。
ロック好きでも30代より若いとデヴィッドボウイを知らないかもしれない。映画が語
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わたしの幸せな結婚(2023年製作の映画)

3.9

面白いという噂を確かめてきた。
アイドル映画だし、(劇場集客には)タイトルに難がある。原作、タレントファンしか足を運ばないかもしれない。しかし見ればいろんな要素のどれかにきっとひっかかる。特にキメツの
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エゴイスト(2023年製作の映画)

3.5

これは見ようかどうしようか非常に迷った作品だ。
ストレートの男は頭で理解はしてもその現場を見るのはとても嫌だからだ。なので、どこまで見せるのかがポイントだったが、結構やってた。ブエノスアイレスより激し
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オマージュ(2021年製作の映画)

3.4

韓国で初めて映画を撮った女性映画監督、ホンジェウォンは3本の映画を遺した。事実かどうかは知らない。3本目の「女判事」で映画を作ることをやめてしまったと映画は語る。検閲により、ストーリーの辻褄が合わない>>続きを読む

赦し(2022年製作の映画)

4.0

監督のアンシュル・チョウハン作品は初めて見させてもらったが、インドの方が日本映画をなぜ作るのかということに非常に興味が湧く。
映画を引っ張るのは主に三人の役者。法廷ものとしてはトリッキーなものがないこ
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シンデレラ/3つの願い(2021年製作の映画)

3.0

シンデレラストーリーに一定のファンがいらっしゃるのを認識した。新機軸というほどの改変はなく、誰もが安心して見られる内容ではないかと思う。
こういうのは配役の妙を楽しむものなのだろうが、ノルウェーの制作
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マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン(2021年製作の映画)

2.5

映画のつくりはこのデザイナーの研究者でもないただのシネフィル、アートファンには少々退屈だ。
パンフレットがかわいくて出来がいい。

関ヶ原(2017年製作の映画)

3.6

兵庫県のロケ地訪問がこの映画との出会いだ。何度見たか知れず、繰り返し試聴に耐える耐久性を持つ作品だ。
司馬遼太郎の原作の語りを所々に散りばめているのがすごく生きている。
これからも見続けるだろう。

ワース 命の値段(2019年製作の映画)

4.0

映画でいわれる被害者数7,000人という数に驚いてしまう。それだけの数の一般市民がオサマの無差別殺傷の犠牲になった。
その一人一人の補償額を決めて合意させ、訴訟を(誰に対する?)思いとどまらせる役割に
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恋人はアンバー(2020年製作の映画)

3.3

日本のコミックやライトノベルでありがちな設定ではある。ゲイの高校生男女が擬似カップルになる学園ラブコメだが、同性愛者が生きづらい1990年代のアイルランドがどの程度の厳しさなのか想像できない。少なくと>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.5

これまで見たことのないタイプの映画を相当な熱量をもって作ってくれたことが素晴らしい。そしてミシェルヨーがただのおばさんでないことを知って感慨に耽った。あのカンフーアクションは本物だったのだ。彼女の出演>>続きを読む

サポート・ザ・ガールズ(2018年製作の映画)

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ボイリングポイントを思わせる話の運びだが、こちらはスポーツバーが舞台となっている。
オーナーに店の切り盛りを任されているリサは、客の荒くれ者たちを巧みにあしらい、テキパキと仕事をこなす黒人女性で人望も
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新しき民(2014年製作の映画)

3.2

岡山で起きた「山中一揆」を題材にした白黒作品。
多くの人間が易々と死線を飛び越える。人命がまだ軽い時代に生きる意味を問う者などいない。
武士階級の非情な税収奪を謗るわけでも、革命を起こすわけでもなく、
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