ゆうさんの映画レビュー・感想・評価

ゆう

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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.5

ナイフで人殺しが起こっても、ナイフを作った者の責任が問われることはない。良し悪し両面ある行為は、中立的行為として犯罪を構成しない。よくいわれるように、善悪はそれを用いる者の心の中にある。
一方、大量破
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ピクニック at ハンギング・ロック 4Kレストア版(1975年製作の映画)

3.5

殺人鬼のような異常者も出てこないし、目に見える超常現象も起こらないが、そこらのホラーよりもよっぽど不気味である。

謎に謎を重ねたうえで、解説もないまま終幕。
オチをあえて見せない演出なので、解釈は観
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.8

「夜明けのすべて」が名作だったので三宅監督過去作も鑑賞。
最新作に負けず劣らず、極めて完成度の高い作品であった。

静かな映画である。
音楽が一切ないだけでなく、スポ根的な、地から這いあがるようなドラ
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Love Letter(1995年製作の映画)

2.8

「青春18×2」つながりで視聴。
うーん、私には合わなかった。

中山美穂は確かに美しいのだが、校庭を何度も写真に収める無駄に長いシーン等、彼女のイメージビデオを見せられているのかしら?と思えてくる。
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青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)

3.9

ありがちな恋愛映画だろうと舐めていたが、良い意味で裏切られた。
プロット自体は、よくみられる恋愛モノである(特に邦画で)。主人公・アミの背景が意図的に隠されているように感じたので、たぶん訳アリなんだろ
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悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.0

GWはざまの平日19時に鑑賞。満員。
東京では、今のところ下北沢(K2)と渋谷(ル・シネマ)のみの上映となっており、関心の高さに比し、上映館の数が釣り合っていない印象(ただシネコンには向いてなさそう)
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インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

2.8

オープニングはスタイリッシュでワクワク。タイトルバックも結構イケテル。
ストーリの転機となる交通事故までの流れはよい。問題はそこからである。
荒唐無稽な設定は(まだ)許せる。だが、そこに置かれた人間の
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ビニールハウス(2022年製作の映画)

3.0

見逃したと思っていたが有楽町でしぶとく上映していたので、レイトショーで鑑賞。

予告にもあるが、視覚障害の夫のもと、妻を交換するという設定は面白い。
だが、あまりにリアリティがなく、フィクションどころ
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海がきこえる(1993年製作の映画)

4.5

期間限定上映(渋谷1館のみ)。
連日満席が続いていたが、上映終了間際にようやく鑑賞。
ル・シネマにはよく足を運んでいるが、明らかにいつもと客層が違う(~20代と思われる観客がほとんど)。すぐ近くのシネ
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ブルックリンでオペラを(2023年製作の映画)

4.0

想像を斜め上をいく作品。
邦題とポスターから抱く印象とは大きく違う、良質な大人向けコメディ。最後の最後まで笑わせてもらえた。

よくもまあメンヘラな登場人物ばかり集めたな(子どもたちはまとも)というと
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.8

幼馴染のノラ・ヘソンの恋愛物語。
終始、ヘソンのダメ男っぷりにイライラさせられる。
ノラの移住で離れ離れになった二人は、24年もの歳月を経てようやく再会を果たすのだが、相手への強い思いがあれば、多少の
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RHEINGOLD ラインゴールド(2022年製作の映画)

3.5

ラッパーであるカターの自伝的映画。

戦時下に生を受け、西側への亡命、少年〜青年期の犯罪行為、刑務所での音楽活動を経て、成功を得るまでの過程が描かれる。

「日本に生まれたらそれだけで幸せ」みたいな話
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逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.5

圧巻。まだまだ映画にできることはあるのだなと思った。万人におすすめはできないが、もう最高に面白かった。

男女、容姿、収入、能力。社会生活のあらゆる側面で我々は格差に直面する。
格差を前提とした資本主
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季節のはざまで デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

3.8

廃墟と化したホテル内をめぐる中で、そこで過ごした少年時代の記憶をたどる物語である。

過去のエピソードが、突拍子もなく次から次へと映し出される。中には荒唐無稽なもの(死後の世界をめぐるシーンには笑った
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カモン カモン(2021年製作の映画)

3.9

言葉は、相手を、そして自分を理解するためのツールである。
一方で、融通の利かない厄介なシロモノでもある。

うまく表現できずにもどかしい思いをすることもある。
なぜ伝わらないかと相手にイラ立ちを覚える
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うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(1984年製作の映画)

5.0

この世界が現実に存在することを証明できるか。否である。

では、世界の存在を疑っている自分自身はどうか。自分自身の存在は疑えない。これは正である。

街を歩いているとき、私の背後にちゃんと世界が存在す
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52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)

1.1

このレビューはネタバレを含みます

身震いするような臭すぎるセリフの数々。
ファンタジーかしらと疑うような設定(アカラサマな虐待はさすがに世の中黙ってないでしょとか、他人宛の遺書を勝手に見るとか)。
最後には唐突なクジラバッシャーンで失
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ウォンカとチョコレート工場のはじまり(2023年製作の映画)

3.0

チャーリーとチョコレート工場シリーズといえば、私が小学生くらいの時に原作がめちゃめちゃ流行っていて、私も含め、多くの子どもが手に取っていた。
ティム・バートンの前作も、子どもの頃かなり話題に上がって、
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.5

稀にみる骨太な法廷劇である。実に素晴らしかった。

裁判所で繰り広げられる、まさしく「解剖学」。
象徴的なのは、予告にもあるように、殺したかどうかは重要ではない、ということである。
一般にも広く知られ
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

平井堅よろしく「瞳をとじて」がタイトルの本作。

3時間(エル・スールのほぼ倍笑)の長尺。冗長に感じる部分がないではない。
過去作のミツバチのささやき、エル・スールの衝撃にも到底及ばない。
しかし、ビ
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.3

自己と他者は違う。
この埋まらない溝をどう乗り越えるか。

他者を完全に理解することはできない。だた、理解しようと努力することはできる。
避けたいのは、理解される側が「どうせ理解されない」とあきらめる
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恋人はアンバー(2020年製作の映画)

3.6

ゲイのエディと、レズビアンのアンバーが、恋人のふりをする高校生の友情ドラマ。

恋愛関係を偽装するという意味で、ちょっと重め雰囲気の「彼女が好きなものは」にも通じるものがあるが(*「彼女が・・・」は女
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バーバリアン(2022年製作の映画)

3.1

B級サスペンスホラー。
思ってもみない方向にどんどん話が進んでいくのが小気味よい。
細かいことは考えず、2時間ドラマ的な軽いノリで見るのがよい。
バーバリアン=野蛮人というタイトルが、なんだかよくわか
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Here(2023年製作の映画)

3.5

何かが起こるわけではない。

いまここにある現実を、自然も人間もそのままに切り取ったのような映像が続く。

移民の男女が偶然に出会い、互いに関心を寄せるまでの過程を丁寧に描く。

エンドロールの見せ方
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(2022年製作の映画)

3.0

ロマンポルノということで身構えていたが、
ちょっとセックスシーン多めな映画という程度で、不快感なく鑑賞可能。

大まかなストーリは、
父との不和が原因でおじさん好きになったヒロインが、恋愛を通じて成長
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エル・スール(1982年製作の映画)

4.5

ビクトル・エリセ長編2作目。
幾度となく鑑賞しているが、劇場では初。

印象的な光と影の描写。もうオープニングからやられてしまう。

スペインの美しく静かな風景とは裏腹に、ミステリアスな緊張感がつづく
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.5

R-18+はオーバーな気もするが、まあまあなエログロ描写が続く。対照的なのは、絵本のようなファンタジーな世界観。ティムバートンが好きな方におすすめ(できない)

世間から隔絶され抑圧された女性・ベルが
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猿楽町で会いましょう(2019年製作の映画)

4.0

芸能界へあこがれ→上京→貧乏→風俗、という
ウソみたいなザ・典型人物を主軸に据えながらも
今までにない作品に仕上がっている。傑作である。

構成や編集の巧みさもさることながら、
登場人物の描き方が素晴
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TAR/ター(2022年製作の映画)

3.0

なんなんだこれは・・・というのが正直な感想。
観客にここまで解釈をゆだねる映画も珍しい。

現実なのか虚構なのか、観客に判断がつかない不気味なシーンが続く。
もはやホラー映画と言って差し支えないと思う
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

3.0

パーフェクトデイズというか、パーフェクトトイレである。
清掃員の仕事ぶりを示すのに、まったく汚れが写らない。これはファンタジーとして見た方が良い。
それに車でカセットとか、コード付きシェーバーとか、も
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笑いのカイブツ(2023年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

うーん、イマイチ入り込めず。

主人公が人間関係不得意なのはわかる。わかるけど、不器用すぎる。
何度も何度も酒に逃げるシーンがあり、主人公の弱さにイライラ。
好きなことをやり抜く度胸のない、非力の人間
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流浪の月(2022年製作の映画)

4.0

原作既読。
いかに映像化されているか不安だったが、
実によかった。

話題の原作をもとにした映画は、
重要シーンでもモノローグで説明させて終わり、とか、
ひたすら原作をなぞるだけ、とか、
映像にする価
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ノマドランド(2020年製作の映画)

4.0

ハウスは失っても、ホームは失わない。

自給自足の孤独な暮らし、危険と隣り合わせな日常、
ノマドワーカーなんてヌルい言葉が昔流行っていたけど、実際のノマドな暮らしは、ともすれば死と隣り合わせの過酷なも
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正欲(2023年製作の映画)

3.0

ダイバーシティ、ジェンダー平等、SDGs、言っとけばいいでしょ?的な、軽薄な言葉が世の中に溢れている。誰も反論できない美しい言葉には、ある種の暴力が宿る。

本映画のテーマである[多様性]という言葉に
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シチリア・サマー(2022年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

LGBTの権利が十分に認められていなかった、1980年代の美しいイタリアの田舎における、美しい恋愛物語である。

「秘めていれば100年だって続けられる」、わかってはいたものの、秘めごとにする辛さを知
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マイ・エレメント(2023年製作の映画)

2.7

現代社会のレイシズムに真っ向から疑問を投げかけるのはよいが、あまりにも説教的すぎる。

遠い地からやってきた移民が、民族間の不和を乗り越え、お互いを理解しあう。さらに、夢を求めて新天地へと向かうが、自
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