湯っ子さんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

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丁寧に重ねられたエピソードには説明はいっさいなくて、だけどどんなセリフよりもケイコのまなざしや小さな「はい」が何よりも雄弁で。映画というのは映像で語るもんだというのを強く感じさせてくれた。岸井ゆきのが>>続きを読む

密使と番人(2017年製作の映画)

3.9

画と音楽がすごく良い。輝くすすき野原、闇に浮かび上がる松明、雪山の上は青空、美しい。
若い夫婦の家付近のシーンで、本物の雪が降ってると思われる場面があった。ミラクル!
家の裏に何本か、石を土台に木の枝
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八月八日(2016年製作の映画)

3.6

なにげない日常のふりをしているけど、そこにはカメラがある。本当に部屋でひとりの時とは、きっと微妙に違うと思う。見られていることを意識しながら、誰にも見られていないという演技をしている、そんな様子になぜ>>続きを読む

長浜(2016年製作の映画)

4.0

空は薄曇り、黒っぽくてゴツゴツした大きな岩に囲まれた浜辺が、日本の海だなぁと感じたし、濃紺のワンピースに裸足で踊る石橋静河には、今の日本女性のきれいさを感じた。とても素敵だった。

PORNOSTAR ポルノスター(1998年製作の映画)

3.8

予告を映画館で見ただけなのにめちゃくちゃ怖くて、だから千原ジュニアが東京にやってきた時も「ジャックナイフ」と言う仇名も、この映画(予告)のイメージしか浮かばなかった。
なんでそんなに怖かったかというと
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ワイルドツアー(2018年製作の映画)

3.6

この空気感は好き。目線だけで気持ちがわかっちゃう感じとか。
10代の1年ってほんとに大きいね。15歳と19歳の差は、45歳と49歳の差とは当然ながら全く違う。
DNAの勉強をするのには、アメリカまで行
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単騎、千里を走る。(2005年製作の映画)

3.7

ひとりの頑固で一本気な日本人の思いの強さに、ぶっきらぼうだけど嘘のない中国人たちが右往左往する話。リアリティはないかもしれないけど、そこにある心は本当だと感じる映画でした。
自分の子供に上手に愛情を伝
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ミッドナイト・ファミリー(2019年製作の映画)

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お兄ちゃんがすごい。「ちゃんと学校行かないとバカになるぞ。『親が負け組だったから』で済む話じゃないんだから」と弟に諭す。弟くんにとっては、憧れのお兄ちゃんだし、あの救急車も自慢のかっこいいメカなんだろ>>続きを読む

甲州街道から愛を込めて(2022年製作の映画)

3.6

生きるのがヘタな4人の若者のロードムービーで、優しい世界だった。
トウレット症候群のマナミが良かった。動くとかわいい。ぶかぶかコートが似合ってたし、片思いの彼とのエピソードも好き。
メンヘラ女子ルミの
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ザ・スクエア 思いやりの聖域(2017年製作の映画)

3.7

スウェーデンと言えば福祉国家。それとマリメッコやムーミンや、ほっこりしつつおしゃれな北欧インテリア。そんなことしか思い浮かばない私なので、あんなにたくさんの物乞いの人たちがいて、近年の社会問題になって>>続きを読む

フレンチアルプスで起きたこと(2014年製作の映画)

4.0

面白かったなぁ。イジワルな笑いがたくさん込み上げた。
まぁねえ、男の人ってこんなもんでしょ。
私の祖父は空襲の時、慌ててひとりで逃げ出し、子供たちを抱えた祖母におうい早く逃げろと遠くから呼んだ、と父が
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ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

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いちおう目は覚めてたんだけど、夢をみてるみたいだった。初チャッポンを初めて訪れた北千住のブルースタジオで、観客は私ひとり。会場のまんまんなかにどっかり座って、本当に今自分がどこにいるのかわからなくなっ>>続きを読む

淪落の人/みじめな人(2018年製作の映画)

4.3

ひさびさに、ティッシュがだんごになるくらい泣きました。
優しい映画。だけど、厳しい現実をなかったことにしてるんじゃなくて、厳しい現実があるからこそ優しくあろう、夢を持とうって思える作品だった。

主演
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(1997年製作の映画)

4.2

映画の中のバイク2ケツといえばとりあえずエモい、みたいな気がしてしまうけど、こんなにいじましくもおかしいバイク2ケツってあるだろうか。笑いながら泣けてきちゃう。
「青春神話」「愛情万歳」に続くシャオカ
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愛情萬歳(1994年製作の映画)

4.0

劇伴はなく、セリフも最小限。人物設定になんの説明もない。だけど、しだいに私もあのマンションの一角に息をひそめて、彼や彼女のすることをのぞき見しているような気持ちになる。
カメラはひたすら人物たちを眺め
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青春神話(1992年製作の映画)

3.8

「若い時代と悲しみ」という花ことばを持つ花があって、から始まるみじかい小説を、ついこの間読んだ。この映画を観ていて、ああこれが「若い時代と悲しみ」だなぁと思った。
青春、それは青い春。青が意味するもの
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チア男子!!(2019年製作の映画)

3.7

ベタベタではあるけど、さわやかな気持ちになれて楽しめました。なぜチアなのか、という理由付けの設定がちゃんとしているのは原作の力かな。
大学生というにはちょっとトウが立ってはいるけど、イケメンたちのキャ
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ピッチ・パーフェクト(2012年製作の映画)

3.4

ステージのところと、大学でやっていた歌バトル?みたいなところはそれなりに楽しかったけど、ギャグやキャラクター描写はほぼ笑えなかった。「セックス大好き」ちゃんと、アジアン不思議ちゃんの最後のステージでの>>続きを読む

異邦人 デジタル復元版(1967年製作の映画)

2.6

中坊の頃に読んだ「異邦人」。内容を理解していたとは思えないけど、「今日、ママンが死んだ。」っていう書き出しに心を奪われて読み進んだことは覚えている。
この物語の舞台が植民地だった頃のアルジェということ
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宮松と山下(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

深く読んで語ろうとすればできるのだろうか。
私のアタマでは、予告編やキャッチコピーで受けた印象のことくらいしかキャッチできなかった。
ロープウェイが登っていく/降りていく画とか、映像もなんだかかっこい
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THE DEPTHS(2010年製作の映画)

4.2

濱口版BLなのか、これは?

登場した時から、カメラマンのペファンがカッコいい…しかもめっちゃ優しくてまともでいい奴。おでんでいうと、ほどよく味がしみてるけど、中心は本来の甘さが感じられる大根(これは
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永遠に君を愛す(2009年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

なんだ〜、この変な映画。コレはコメディなのか?ちょっと学芸会ぽさもあるけど、思わぬ方向に会話が流れていくのには見入ってしまう。登場人物みんなの気持ちがよくわからない。共感性ゼロ。

本作でも、乗り物に
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あちらにいる鬼(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

原作は少し前に読んでいたが、さらっと流し読みして復習してから鑑賞。
上手い具合に編集してあるなと思った。原作にない部分は、ひとつの解釈なのかなと思う。
そもそも、井上光晴とその妻と瀬戸内寂聴をモデルに
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魔法にかけられて(2007年製作の映画)

4.0

ディズニーアニメのお姫様そのままのしぐさとしゃべり方の女の子がニューヨークにいる、ってだけでこんなに面白いなんて!こんなに平和な笑いってほかにあるかしら?セントラル・パークでのミュージカルシーンは最高>>続きを読む

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)

3.8

きっと若い頃はワンダのようだったんだろうなっていう人を知っている。でも、ワンダはできないことはできないと言うし、ほめられたらとても控えめに笑うし、その人よりもよっぽど性格よさそうだった。だから、観客は>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

4.0

「バーフバリ」を数年前に家で観た時、これは映画館で観たかった〜!と思った私。なので、同じ監督の本作はやっぱり映画館に行かなくっちゃ!しかもIMAXで!と張り切って行ってきました。もう最初っから最後まで>>続きを読む

あいたくて あいたくて あいたくて(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

タイムラインでこの監督作品のレビューを見かけて気になっていたら、「苦役列車」の脚本を書いた方なんですね。「苦役列車」の原作からの改変は好きだったのと、若くない男女のお話ってところに惹かれて本作を鑑賞。>>続きを読む

ふしぎの国のアリス(1951年製作の映画)

4.0

「不思議の国のアリス」に子供の頃の私が感じたのは、「いやな感じ、楽しくない感じ、気持ち悪い感じ」を足して指先でほんの少しすくった感じ、だったのだと思う。もちろんそれを言葉にして意識したのは今が初めてか>>続きを読む

ピーター・パン(1953年製作の映画)

4.0

なんとなく知ってたつもりになっていたピーター・パンだけど、アニメをちゃんと観たのはこれが初めて。
夢と冒険の物語、と素直に観ても楽しいし、ダークファンタジーとしてもいくらでも深読みができちゃうところが
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Danchi Woman(27分版)(2019年製作の映画)

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長年住んだ団地から引っ越しするおばあさん。

引っ越し業者のおじさんが、
「ちゃんと働いて、ちゃんと生きてきた人だっていうことがわかる、そういうことは荷物の詰め方に全部出るから」
みたいなことを言って
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アフター・ヤン(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

感想をまとめるのがとても難しく、だけどあれこれ考えて書き連ねてしまいました。とりとめのない文章ですみません。




心地よく揺らいだ音をたくさん聴いた。柔らかく優しいなにかに包まれて、とろとろとまど
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パリ20区、僕たちのクラス(2008年製作の映画)

4.5

すごく良かった。嘘くささが微塵もない(ように感じる、私はフランス人でも20区に行ったことあるわけでもないから、リアルは知らないけど)。ドキュメンタリーと間違えるくらい。過度な演出もなく、生徒たちは演技>>続きを読む

スプリング・フィーバー(2009年製作の映画)

5.0

「こんなにやるせなく春風に酔うような夜は、私はいつまでも明け方まで方々歩き回るのだった。」
この一節を映画にしたような作品だった。

作中で朗読される郁達夫の小説「春風沈酔の夜」は、中国では高校の教科
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ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋(2019年製作の映画)

3.8

思ったよりこのふたりを結びつけるためのお膳立てがちゃんとしていて、鑑賞後には「ありえない?いや、アリエールでしょう!」って言いたくなった。このふたりには、アメリカの最高判事になったRBGとその夫カップ>>続きを読む

ヒットマンズ・レクイエム(2008年製作の映画)

3.6

ベルギーの古都ブルージュ。美しい街並みなのに、なぜか陰鬱な表情。劇伴のピアノも、何かザワザワ胸騒ぎを誘うように響く。コメディを選んだつもりだったのに…、ジャンル間違えてませんか。ブラックな笑いとあるけ>>続きを読む

ブラインド・マッサージ(2014年製作の映画)

4.2

途中何回か、声にならない悲鳴をあげた。開いた口が塞がらない状態はトータルで15分くらいあったと思う(体感)。
南京。視覚障害の若者たちが集団生活をしながら勤めるマッサージ院での群像劇。
見えない人同士
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