シネマの流星さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

シネマの流星

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子連れ狼 死に風に向う乳母車(1972年製作の映画)

5.0

まさかの二丁拳銃、大五郎のガトリング銃。チャンバラ全無視、冥府魔道の映画。

古き時代を見せるわけでも、昔の人情を伝えるわけでもない。殺陣は敵ではなく、観客の先入観・常識をぶった斬ってこそ。

子連れ
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子連れ狼 三途の川の乳母車(1972年製作の映画)

5.0

鳥人ブブカも真っ青、火事場の棒高跳び。

時代劇でもアクション映画でもない、アクロバティックな殺陣映画。若山版007。

滑稽なスプラッター・ムービーの中で、主役を大五郎にし、幼子のサバイバル物語にし
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ルパン三世 カリオストロの城(1979年製作の映画)

5.0

最も鑑賞数の多い映画。

『カリオストロの城』の本編は、実は最初の数分。炎のたからものが終わるオープニングまで。

冒険の舞台であるカリオストロ公国に向かう旅情こそが、作品の心臓であり、ロードムービー
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徳川セックス禁止令 色情大名(1972年製作の映画)

5.0

すべてのアートの源泉は、本能の解放。
今作の「性」への寛容は、すなわち「映画」に対する観客の寛容ともリンクする。

映画は2時間そこらで人生を描こうとする暴力的な芸術で不完全のアート。粗を探せばいくら
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子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる(1972年製作の映画)

5.0

子連れ狼には色気がある。昭和の色気がある。幼児の切腹・介錯シーンや、路上での強姦などオブラートに包まず見せているからだ。

ヒーローものなら主人公が助けるか復讐するが、拝一刀は目をつぶる。余計な戦いは
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座頭市物語(1962年製作の映画)

5.0

座頭市は「月」である。闇夜で、おたねを優しく見守る光。

三隈研次は時代劇×ヤクザという2本の刀を重ねることで、至高の映画を生み出した。

呼吸の乱れ《聴覚》で平手の病を察する座頭市、右肩の筋肉《視覚
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おおかみこどもの雨と雪(2012年製作の映画)

5.0

アニメ映画で5傑に入る。

「人はなりたい姿ではなく、なるべき姿になる」サマセット・モームの『月と六ペンス』の真理が突き刺さる。

細田守の凄さは、人間と自然を対等に描いたこと。

とかく人は自然を神
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血煙高田の馬場(1937年製作の映画)

5.0

ただ走る姿を捉えるだけで、阪東妻三郎は何かを訴える。否が応でも我々はなにかを感じとってしまう。これが映画なのだろう。

中山安兵衛もロッキー・バルボアも、己の運命に向かって走る。未来を変えようと走る。
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サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

5.0

現時点で今年のベストワン。

面白い作品は必ず2回観るが、あえて脳内で再上映し、しばし体験を熟成させたくなる。

ありがちな学園ものとは少し違う、甘酸っぱい果実ではなく、ニンニクと鷹の爪の効いたペペロ
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雄呂血(1925年製作の映画)

5.0

大好きな阪妻の初期代表作。

スターは夜空に輝く星の意味であり、映画も闇の世界で輝く者だけがスターになれる。

阪妻の芝居は歌舞伎もどきで”演技”と呼ぶには遠い。しかし、哀愁や鬼迫の”表現”は疑いのな
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竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

5.0

初・細田守。

凄まじい才能。表現力。ファンタジーとリアルの融合は観る側が迷子になりがちだが、これはひとつの光に導かれる。

作品は引き算の連続で作られているから、粗を探せばいくらでも批判できる。しか
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ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)

5.0

「武士」は自分という主人に仕え、「侍」は主君に忠誠を誓う。

異国にいるジム・ジャームッシュは侍と武士の違いを日本人以上に理解していた。

ゴースト・ドッグ(フォレスト・ウィテカー)が出逢う人々に本を
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打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(2017年製作の映画)

5.0

8月が来るたび出逢いたくなる映画。閃光、儚さという打ち上げ花火。

なずな(広瀬すず)と典道(菅田将暉)を並べたとき、身長差が大きい。典道が物語を動かしているように見えて、コントロールしているのは常に
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スカーフェイス(1983年製作の映画)

5.0

1983年公開。この年に生まれたことを誇りに思う。

「赤」がメインカラーだが、これは血の争いや情熱以上に、血よりも濃い者との交わりが人生であり、「赤ん坊」の赤でもある。

トニーは己の本能に忠実で、
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デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

5.0

時代の最先端を走るトップランナーは、世間より早く未来を察知するアンテナを持っている。

今作を古臭いホラー、ステレオタイプのコメディと思うならジム・ジャームッシュを観る才能はない。

ゾンビはワクチン
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ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984年製作の映画)

5.0

音楽や絵画が映画より優れたアートであると信じている人は『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を観ないほうがいい。

その幻想はジム・ジャームッシュという”濁流”によって洗い流されてしまう。

一つ一つの
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パターソン(2016年製作の映画)

5.0

日々を唄い、愛を詠う。

牧歌的なテンポになっても、柔らかな映像美になっても、”ズレ”の美学を描いてきたジム・ジャームッシュの一貫性はブレていない。

街と同じ名を持つパターソン(アダム・ドライバー)
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オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(2013年製作の映画)

-

冒頭のレコードの回転と映像の流転。結局、人生は同じ場所をグルグル彷徨する。

ラストは気高いヴァンパイアは生き延びるために、忌み嫌うゾンビ、吸血鬼のエヴァになる。オープニングとエンディングのギャップの
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ナイト・オン・ザ・プラネット(1991年製作の映画)

5.0

5つすべて物語が始まる前の物語。続きが気になり、本来なら1人1本の映画にできるところを、ジム・ジャームッシュは”その後”を観客に託す。

タクシーの移動も小さな旅であり、人間ドラマがある。狭い空間の中
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パーマネント・バケーション(1980年製作の映画)

5.0

アメリカン・ニューシネマが終わりを迎え、新しい時代が始まる1980年公開。

社会に適合できないアリーは孤独を消すため街を彷徨うが、アウトサイダー同士は磁石のマイナスとマイナス。誰ともセッションできな
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ミステリー・トレイン(1989年製作の映画)

5.0

3つの物語が列車のように数珠つなぎで進行し、登場人物たちはクロスロードせず平行線で進む、

ジュンとミツコはカップルだが、兄妹のようであり親友のようにも見える。

恋や愛や友情は別の感情ではなく、オリ
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ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)

5.0

あらゆるクリエイターがジム・ジャームッシュに熱狂する理由が集約されている。

“衝撃”とは、強いメッセージでも奇想天外なアイデアでもなく、日常をヒョイとすくいとって、そこに少しのスパイスを加えたもの。
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デッドマン(1995年製作の映画)

5.0

人生は死に向かう旅であり、そのプロセスで何者であるかが人生といえる。

ウィリアム・ブレイクは若くして労働を喪失し、死へと向かう旅に出る。

その過程で何者でもないノーバディと出逢うことで、違う自分に
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コーヒー&シガレッツ(2003年製作の映画)

5.0

痛快。市松模様のテーブルが欲しくなった。

健康の奴隷だらけの世の中と対極。これぞ映画だ。

キレイな肺をニコチンで汚し、「なんとかフリー」で呪われた血液に大量の砂糖とミルク、カフェインをぶち込む。
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アジアの天使(2021年製作の映画)

5.0

石井裕也の最高傑作にして今年ナンバーワンの作品。テアトル新宿で2回目の鑑賞。

言葉も目的も違う日本人3人と韓国人3人が1台のバンに乗って同じ東の海を目指す。

東の海は太陽が昇り、日本と韓国を繋ぐ場
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茜色に焼かれる(2021年製作の映画)

5.0

これが石井裕也の最高傑作なのか、それとも最高傑作の始まりなのか?
世の中へのファイティングポーズは健在で、去年とは別次元の映画作家になっていた。

令和の2年間を拾い上げ、2021年に「!」を打つ作品
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過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道(2020年製作の映画)

5.0

今年のベストフィルム。

やっと映画館、復活。時代の最先端を行くはずの東京が時代遅れになってから2ヶ月。ようやく再開した。

石井裕也監督の『茜色に焼かれる』が観たくてトーホーシネマズに行くも満席。代
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海峡(1982年製作の映画)

5.0

森谷司郎と木村大作、そして高倉健による『八甲田山』と並ぶ青森を舞台にした宝石。

トンネルは闇との戦い。それは無力との闘いであり、孤独との遊戯。その先にある光を見つめる視線こそ、男の仕事。

吉永小百
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BLUE/ブルー(2021年製作の映画)

5.0

いい映画は、いつまでも観ていたい気持ちと、早く席を立って動き出したい衝動に駆られる。

この映画が凄いのは最後の2試合で「赤こそが挑戦者の色である」と証明したことだ。

毎年、何度も後楽園ホールに足を
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ハウルの動く城(2004年製作の映画)

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城がなぜ動くのか?
空を飛ぶのではなく、生えた足で歩くのか?

この映画は様々なものが動く。年齢、容姿、そして心。

ハウルの城は心臓の形をしており、動くのは心の変化を表現している。運命によって動かさ
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ノマドランド(2020年製作の映画)

5.0

「あなたの人生を変える」というキャッチコピーは安っぽくて嫌いだが、この映画は本当にその力がある。

ノマドは「転職族」であり、イングランド民謡『グリーンリーブス』を歌って旅する主人公と自分が重なった。
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騙し絵の牙(2021年製作の映画)

5.0

レイトショーが復活した21:30の新宿ピカデリーはガラガラだった。

少し心地よい空虚感のなか、吉田大八 監督はとてつもないものを届けてくれた。令和三年の一作目から最高傑作。

『騙し絵の牙』が最高に
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(1954年製作の映画)

5.0

この映画に『道』のタイトルをつけたフェリーニの凄さ。

オート三輪はアメリカの騎馬隊であり、乱暴に人生を開拓していく象徴。ザンパノはジェルソミーナを亡くしてから、その純粋無垢な天使の愛に気づく。しかし
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理由なき反抗(1955年製作の映画)

5.0

人生で好きな映画3本の指に入る
『理由なき反抗』

大学の4年間、VHSで年3回は見ていた。テーマ曲がほぼ一つしかないのにテンポや音色を変えることで、まったく違う効果を生んでいる。これぞ映画音楽。
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朝が来る(2020年製作の映画)

5.0

『滑走路』と並ぶ令和2年の映画の両翼。もちろん日本映画の範疇ではない。世界の映画の中での話だ。

7月のカンヌでパルム・ドールを獲るだろう。

本物の映画はドキュメントよりも真実を届けてくれる。

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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(2020年製作の映画)

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ダメな映画の見本。もっと声優を信じてほしかった。アニメは表現の幅が広いから足し算で作ってしまう。

すべてのセリフにBGMをかぶせてるから言魂の力が台無し。

せっかく声優がいい仕事してるのに、すべて
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