■ あらすじ
『幕末、"人斬り抜刀斎"と呼ばれ恐れられた伝説の剣客がいた。
その名は緋村剣心。
維新以降、真剣を逆刃刀に持ち替え流浪人として生きていた彼は、 神谷薫と出会い、神谷道場に居候するようになる。
"不殺"の誓いをたてた剣心だが、不本意ながらも戦いの渦に巻き込まれていく。』
■ 感想
原作は「週刊少年ジャンプ」にて全28巻、累計発行部数7200万を超えた人気コミックである。
少年漫画で明治時代を舞台にしたものは数少なく、ましてや、アニメ、実写映画、オーディオブック、ゲームとあらゆるメディアミックスがなされた、作品など今後もないのではないだろうか・・・。
・普段は頼りないのに、戦闘ではりりしい表情を見せる剣心
・喧嘩っぱやいが仲間思いの相楽左之助
・剣心のライバルである四乃森蒼紫や斎藤一
など、魅力的かつ個性的なイケメンキャラクターたちが多く、女性人気を獲得しファンを増やしたのも、大ヒットの要因の一つではないだろうか・・。
主人公である緋村剣心の武器は"逆刃刀"、そして流派名は"飛天御剣流"と如何にも中二病全開なセンスであるが、これを正面から描き切り、そこまで違和感を感じさせない力量には脱帽である。
また、剣心の奥義は「天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)」であり、言葉が出ないほどカッコイイ!!!
「学校の怪談3」で、少年が掃除の時間に「天翔龍閃」で人体模型を破壊したシーンを観て、思わず笑みが漏れたのは私だけではあるまい。
基本的にどのエピソードも好きなのだが、「追憶編」(OVA)は別格に好きである。
テレビアニメの前日譚に当たり、剣心が如何にして"人斬り"として幕末の世を生き抜いたかを、どこまでも優しくも切なくも描いた話である。
また、剣心がどういった経緯で人斬りから人々を守る人物になったかが、描かれている。
「追憶編」を観た後では、「追憶編」の方が本編で、テレビアニメの方がただの後日談としか思えなくなってくるほど素晴らしい作品である。
テレビアニメの方では、奇抜なアクションが売りとしており、必殺技を繰り出す時はわざわざその必殺技を叫んでいたが、「追憶編」では一切叫ばず、淡々と人を斬っていく。
その殺陣シーンは血みどろでバイオレンスなものが多い。
にも関わらず、気持ち悪さを感じさせずにリリカルに胸に迫って来るのは、美しい背景の描写が大きいと思う。
一部を抜かして、「追憶編」のバイオレンスシーンでは、月夜の野原だったり蝉しぐれが鳴り響く光が降り注ぐ森の中だったりと、美術館に展示されてもおかしくないような美しい背景の中で行われる。
これにより、剣心の心の優しさや切なさが前面に映し出され、リリカルに物悲しい印象を受けるのである。
音楽に関しても、世界観と完全にマッチしており、真の意味で重みがあり奥深い音楽で、キャラクターの心情をダイレクトに視聴者へ伝えるようになっている。
また、「追憶編」はテレビアニメと違い、人間ドラマを主軸に描き、人を殺さなければならない時代に生きる人々の姿が描かれている。
特に素晴らしいのが、剣心と巴の物語だ。
初め剣心は、人々を守るために人斬りを始めたが、いつしかそれ自体が目的となっていく。
そんな自分の心を殺し、冷酷な殺人鬼と化していた剣心であったが、巴という女性と出会った事により一変する。
色々あって、剣心と巴は山奥の田舎で暮らすようになる。
畑を耕す生活をしていく中で、剣心の殺気は完全に消え、2人はお互い惹かれるようになっていく。
しかし、巴には重大な秘密があった。
そして、その秘密により物語は取り返しのつかない悲劇を迎えることになる。
「追憶編」は、私の人生を一変させたほどの素晴らしい作品であり、「るろうに剣心」のアニメ本編を観なくてもいいから、「追憶編」を観て欲しいくらいオススメできる作品である。
個人的には、学校設定教科の9教科を『国語、社会、数学、理科、保健体育、外国語、音楽、美術、技術・家庭』ではなく、『国語、社会、数学、理科、保健体育、外国語、エヴァンゲリオン、闇金ウシジマくん、るろうに剣心追憶編』にして貰いたいものだ。
延長されるかもと心配していた「るろうに剣心 最終章 The Beginning」も明日無事公開しそうだ。
「追憶編」の話を最後に持っていく辺り、実にセンスがいい!!
というより、間違いなく大友啓史監督は「追憶編」対して深い想い入れがあるだろう。
出来る事なら、「追憶編」(OVA)を超える作品に仕上がっていて欲しいものだ。
明日が楽しみだ!!