しまうま

お伽草子のしまうまのレビュー・感想・評価

お伽草子(2004年製作のアニメ)
3.8
名作。
面白いけど惜しい。惜しいけど面白い。そんな作品。


平安時代編と東京編の2部構成で、1部で活躍した主人公らの後世の姿が2部で登場する。

個人的には2部の現代編のほうが好みだけど、ネットで他の人の感想を読む限りではどうやら1部のほうが好まれているっぽい。2部の、さまざまな都市伝説に徒手空拳で挑むときのワクワクが、自分としては観ていて心地よかった。

大きな残念ポイントは主に2つ。
作画の不安定さと、全ての問題を解決させるにそのオチ的な解決手段。この2つがもうちょっとまともだったら、もっともっと良作になっていたはずだったのに。
逆に言えば、それらがあるにもかかわらず「観てよかった」と思わせるパワーのある作品ということかもしれない。

詳しくは後述。



▪️▪️あらすじ▪️▪️
[平安時代編]
平安時代中期。病と飢饉により荒廃した都を背景に、武士と陰陽師による対立は収まる気配がなく、下民の生活はひどくなる一方だった。
朝廷はその状況を打破しようと弓の名手である源頼光に、都に平安もたらすとされる伝説の勾玉を探し出すよう伝える。
だが頼光もまた重い病に倒れていた。そこで妹の光の君が、兄になりすまして代わりに勾玉を探しに行く旅に出ることに。
光を深く慕う家臣渡辺綱と共に、勾玉を探す長い旅が始まった。


[東京編]
2004年、東京。
17歳の女子高生ヒカルは、他界した両親が残してくれたアパートの大家として生計を立てていたが1年前、兄の頼光が謎の失踪を遂げて本当にひとりになってしまった。頼光を深く慕っていたその後輩にしてフリーライターのツナは、ヒカルのアパートの住人でもあり、ヒカルの兄代わりとして世話をする決意をひそかに抱えている。

ある日、ヒカルは失踪したはずの兄を目撃するがツナには見えず、自分だけしか感知してないことを悟る。そしてその場所にいたのは万歳楽と名乗る不思議な男。

兄の行方を追うヒカルはそれ以降、東京を舞台とした不思議な事件に巻き込まれていくことになる。





▪️▪️ネタバレありの感想▪️▪️
ポジティブな面としては
とにかく主人公のヒカルがかわいい。
平安時代の男装した姿は凛々しいけど脆さもあって美しい。
現代のヒカルはまさに都会の女子高生、制服も私服も着こなし含めてリアルさが際立つ。そこがまたかわいい。

ただ、話の尺稼ぎなのかヒカルが駄々をこねるような時間も長くて、そこにイライラしてしまったことは否定できない。
物語の最後にてそれがけっこう激しく出るのだけど、それに加えて前述もした「解決手段」がひどすぎる件についてはここで書いておかないといけない。

その解決手段が、件の勾玉にヒカル自身が手を乗せる。ただそれだけ。いやいや、こんだけ引っ張って引っ張った問題なんだから、もうちょっと絵になるやり方考えてほしかった。

ここで、残念ポイントの2つ目でもある「作画の不安定さ」に言及することになるのだけど、ヒカルが勾玉の力によって東京を落ち着かせてお兄さんの失踪も無かったことになり、いちばん最後の場面は「お兄さんが旅から帰ってきてそれを出迎えるヒカルたち」の一枚絵で終わる。

その一枚絵が、本当にひどかった。
最後の最後なんだから、せっかくならここは渾身の力を込めてほしかった。作画はただ不安定だっただけで、ずっと酷かったわけでもない。良かった回だってもちろんあった。100%の力を出してくれれば何も文句なんか言わない。全力を尽くしてほしかった特に最後の一枚絵ならば。





だいぶ文句言ってしまったけど繰り返しておきたいのは、決して駄作じゃなくむしろ名作だということ。東京編で、都市伝説を解決するために奔走する様はほんと面白かったし、キャラクターには個性あるし。

何より音楽も素晴らしかったことは付け加えておきたい。東京編のOPでは最初に原付バイクのエンジン音が鳴って始まる、放送時にはこの音を聴くために正座して待っていたほどだ。してないけど。



今もU-NEXTで配信されているので、お暇なかたには勧めてみたい作品だ。
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