お腹すいた

時光代理人 -LINK CLICK-のお腹すいたのレビュー・感想・評価

時光代理人 -LINK CLICK-(2021年製作のアニメ)
5.0
中国製作のアニメ。

人間て年を重ねて行くと(否、まだ10代だとか若くても)食わず嫌いをする事が多くなるけど絵柄が苦手かも、と見る気にならなかったのが櫻井孝宏さんが声を担当していてあの人の演技が素晴らしいのはよく知っているのでそれなら見よっと前向きに見たら作画も仕上げも話運びも美術も何もかもが素晴らしかった。

1話、2話とまだ物語が始まったばかりの回では舞台の基盤となる【時光写真館】の外観が周囲の様子と共に映され、「写真館の外はこんな町並みが広がってるんだなぁどこかノスタルジックですごく良いな」と見る側に郷愁を感じさせ物語の世界観に没入させる仕掛けが上手くしてあるのを感じる。
それは世界に作品を売り出す事を考えているのもあると思う。

写真の世界に入れる能力を持つ時、時をサポートする為に存在する能力としか言いようがない、写真の中の限られた時間での様子を探知できる光、二人の互いあってこそのバディ感もすごく良い。

1話で時が宿る事になるエマという会社員の女の子と彼女の両親の絆、親子で深く互いに大切にする事は日本人にはちょっと理解が出来ない部分もあると思う。また中国の田舎の貧しさ。圧倒的な貧しさ、これは特に日本の人は理解が出来ない部分だろう。指先をボロボロにして身を粉にして苦労して働いてもそれでも稼ぎが少ないのだ。大変な思いをして稼いで貯めたなけなしのお金を使って子供には不自由なく暮らさせてあげたい、と都会に送り込んでやったエマの両親の思いを考えると胸が張り裂けそうになる。
また、そんなふうにして都会で働くエマもそれはよくわかってる。
このアニメはいろんなところに中国のカルチャーが当たり前のように出てる。日本人と見た目が同じアジア人でも、さまざまなところでカルチャーが違うゆえに、そこを理解するとグッと話が深みを増して面白くなる。
例えばそれがよく現れているのが1話でエマが会議室で親の事を罵倒されるところ。
個々人の性格的なところもあるだろうけど、あんな風に(親に学がないなどと)両親をバカにされたらエマがアメリカ人、韓国人だったなら途端に馬乗りになって女をぶん殴ってるところだろう。日本人なら、イラッとしながらもヘラヘラ笑ってやり過ごすんじゃないかな? 言い返すとか殴るなんて想像も出来ないだろう。エマも時も中国人だからこそ殴りたかったところをそれ以上に親に迷惑をかけられない、と強い思いから歯を食いしばって我慢した。
とこれはあくまで私が知り、想像するそれぞれの国民性の違いなのであくまで個人の感想という事で。ちなみに私ならだけど、そもそもそんな事は相手に言わせない。ヘマもしないし実力があるからそんな風に言わせる余地を相手に持たせないな。

3〜5話は実際に中国で起きた四川大地震のお話で、写真の中に入って過去で時が暴走してもどうせみんな死んで帳消しになるから光もそれほど強く止めてないのがとても残酷な優しさだと思った。

閑話休題的に6話は途端にポップな話でのほほんとしてるけど、6話で得た必殺技がその後で役立つのだからなかなか上手く伏線が張られてる。

アニメは残念ながらもうすぐ最終回だけど、続編があると良いな。