マヒロ

ラブ、デス&ロボット シーズン3のマヒロのレビュー・感想・評価

4.1
愛と暴力にまつわる短編SFアニメーションアンソロジーの第三シーズン。これまでのシーズンも粒揃いで良かったが、個人的には今回が一番好みの作品が多く楽しめた。
以下、特に好きだった話

・『最悪な航海』
航海中の船に突然蟹のような化け物が襲いかかり、クルーを殺した上に倉庫の中に籠城する。意思の疎通が出来る化け物は、ある島に自分を連れて行けば見逃してやると提案するが、船長の男は要求を飲んで島に連れて行けばそこにいる人たちが犠牲になるのではないかと考え、近くの無人島に化け物を騙して連れて行くことを思いつく……というお話。
ジメジメとした船内の生臭さが漂ってきそうなリアルな描写は秀逸だし、唐突に訪れる死のドライな描写もハードで格好良い。設定は突飛ながら浮ついたところのない堅実に面白い作品だった。

・『小さな黙示録』
ゾンビアポカリプスが巻き起こる様を超俯瞰&倍速で眺めるという変な話。
「近くで見たら悲劇でもヒキで見たら喜劇」を地で行くような作品で、凄まじい大災害でも遠目に見たらものすごくマヌケに見えるというのが面白い。オチの人を食ったようなアホさ加減も含めて、スピード感あり・見応えありの良作だった。

・『絶体絶命部隊』
猛獣型の殺人マシーンに襲われる特殊部隊を描いたお話。
ノリが極限まで軽い『プレデター』みたいな感じで、次々と死にまくる登場人物とそれでも止まないマシンガンのような軽口が楽しく、悲惨なのに一ミリも湿っぽくならない明るさが魅力的な一作。

・『彼女の声』
ジャングルに訪れた兵士たちが、湖で貴金属を全身に纏った奇妙な女の声を聞いた瞬間おかしくなり自滅していくが、耳の聞こえない一人の男だけが生き残り……というお話。
シーズン1の『目撃者』でも異彩を放っていたアルベルト・ミエルゴという人の作品。木々や水など本物にしか見えないクオリティでほぼ実写のようなリアルな映像だが、その中で現実にはあり得ないような超自然的な現象が起こるので認識をバグらせられるかのような異様な迫力がある。湖の女神のような存在の艶かしい動きと奇妙な格好のインパクトも凄いし、巻き起こる惨事の血生臭さが漂ってくるかのような描写も強烈。
常にこの世の理から外れたような奇妙な空気感は実写にCGを付け加えただけでは出せない味で、アニメだからこそ産まれた傑作だなと思った。
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