都部ななみ

インビンシブル ~無敵のヒーロー~ シーズン2の都部ななみのレビュー・感想・評価

3.8
侵略者の父と自らの差別化に悩むマークの葛藤を繊細な筆致で辿り、大胆な活劇と展開からはS1と変わらないアニメとしての地力の高さを感じられて良かった。承に位置する橋渡し的なシーズンながらも確かな満足感がある。オムニマンはマジお前なんなんだよ。EP4が白眉。

最強のヒーローが異星からの侵略者だとしたら……というヒーローコンテンツの潮流を汲みながらも、意外性のある展開と情緒的な進捗を交えることで骨太なヒーローアニメとして君臨する本作は、その豊かな精彩をSEASON2でも発揮している。

父親であるノーラン(オムニマン)との隔絶を経て、
大学での新生活を開始する形で父親とは差別化された自分を形成しようと試みを続けるマークの姿は直向きに健気で、その上で不利益を被ることを良しとして英雄的使命を果たそうとする姿には愛着を感じずにはいられないでしょう。今ではもう物珍しくなった善性を決して見失わない”無敵のヒーロー”像はSEASON1から純度を増す形で機能しており、その愛着が彼の個人的な葛藤を観客にとっても重大なこととする感情移入の匙加減も素晴らしい。

彼に感情移入した身で迎えるEP4『It's Been a While』は、だからこそ衝撃的で感動的で激動のエピソードとなるわけで、挙動不審な女子中学生のように繊細なオムニマンの言動の数々がこの作品の面白味の幾許かを担っていることを再認識させられるのも良かったです。反省をし、改心したようで、その心根のねじ曲がり方はまったくもって規格外でこのシーズンを締め括る最後の台詞の『どの口が!?』振りが凄まじく、思わず笑ってしまう。

インビンシブルが凡百のヒーローアニメとは異なる点として、
その行動と作劇上の配置の意図が読めないヴィランの数々がありますが、今シーズンはよりそれが有効な形で作用している。グロテスクな表現を介する事で得られる映像的作劇的な衝撃が到来するタイミングは我々にはなかなか読めず、羽休めの回のようで物語と人物が幾度も掻き乱されるので先の展開への興味が尽きません。

それに対して散り散りに展開するサププロットは未だに土台作りの域を出ておらず、マークの物語に焦点を絞れば始点と終点が理知的に結ばれてる一方で、事態の未精算への不満や画面上で展開される情緒をそのままの大きさで受け取るのが難しくなってるように思います。

自分を定義するものとは?

このマークの葛藤の類例として、たとえばドナルドのクローン問題は奥行きがあり世界観の拡張にも繋がっていますが、それが副次的な問題であることには変わりなくそれ以外のプロットは間を繋ぐ為の葛藤として映るのは無理ない話ではないかと考えてしまう。

シーズン単位の脚本制作が海外(主にアメリカ ハリウッド的な)セオリーなのには理解を示すとして、この優れたヒーローアニメがより優れた形になる為にはこの問題を無視できないように感じられる。

最終話はSEASON1の最終回と比較すれば盛り上がりに欠けるかもしれませんが、オムニマンとリフレインさせる形でのマークの激情からの行動は目を見張るものがあり、彼が普通の人間として生活を切り捨てていく姿に切なさを覚える一方でこれからの展開に期待をさせる幕引きとなっている印象。
都部ななみ

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