異世界の勇者と魔王がW主人公だが、世界観はヨーロッパ風では無く、もろ現代日本。SNSやYouTubeはもちろんあるし、スキャンダル狂いのマスコミはいるし、政治家は汚職してる。そんな世界に勇者パーティや魔王がいたらどんな生活を送っているのか。ある種シチュエーションコメディ的な本作は、程よい闇の深さが視聴者の笑いを誘う。
特に勇者パーティの魔王討伐後の人生はかなりエッジが効いていた。驕り昂った挙句に堕落した勇者。地位を得たが故に雁字搦めとなり、利権主義の政治家に利用される僧侶。政府と対立し、地域紛争を起こすテロリストと化した戦士。腕っ節のみで社会的地位を手にした男達の拗らせ具合も、そして早々に結婚し、表舞台から姿を消した女魔法使いも、それぞれ妙に生々しく、ブラックジョークとしてもシリアス要素としてもとても優秀だった。
しかし、この作品最大の魅力は、あくまでその世界観の中で死から復活した魔王とクズニートと化した元勇者がボロアパートのワンルームで繰り広げるミニマムな日常が主軸の物語であると言う点だろう。それこそ、僧侶と戦士の対立に関しては終盤の山場となるシリアスを担っていたが、正直ずっと見ていたかったのは、どうしようもない引きこもりになった勇者とそれを諌め、立ち直らせようとするまるでオカンな魔王様の下らないやり取りだった。
何より、魔王様がとにかく可愛い。セーラー服でずんぐり体型の三つ目人外幼女な性癖まみれのビジュアルもさることながら、その情に熱く、竹を割ったような真っ直ぐな性格も非常に愛らしい。彼女が自分を倒した勇者にかつての自分に立ち直って貰おうと奮闘する様は、見ているだけでなんだかこちらも励まされているような気分になってくる。口だけでなく行動で示してくれる彼女の熱血さは時に危うく、終盤はそれで死に掛けたりもするのだが、そんな魔王様のピンチに今度は勇者が味方として駆け付ける王道展開には熱さを感じずにはいられなかった。私もこんな献身的な女性にそばにいて欲しい。
