伊賀坂のぼる

ある日~真実のベールの伊賀坂のぼるのレビュー・感想・評価

ある日~真実のベール(2021年製作のドラマ)
4.0
 みなさんのレビューにありますが俳優陣は皆、熱演で魅力的! 画面作りに映画のような重みがあって見応えがあり、安心して没入できます。
個人的には後半に進むにつれて、より盛り上がりました。見始めた人はぜひ後半まで頑張って!
 キム・スヒョンさんは物語の途中で髪を切って第2形態に進化する役が、私が知っているだけでもこれで3つ目ですが、もはや十八番という感じで完璧に演じてます(笑)。いつも物語を見終わるころにはその人物にしか見えなくなる、不思議なほど説得力のある俳優さん。今作でも高い期待を超えてきます。チャ・スンウォンも最高のパフォーマンス!
 ★を5にしなかった理由は、一つには、第2形態のヒョンスがタバコを吸っても咳も出ず、吸入器を使うのもやめて、まるで喘息が突然治ったかのような演出だったのが気になったというマイナーな理由もあるのですが(咳や荒い呼吸が残っていると脆弱に見えるからなのか? でももし私が演出家だったら、むしろ逆に前半以上に喘息はひどくするけどな…喘息が酷くなるにもかかわらずタバコを吸い続ける、という設定のほうが、より第2形態のヒョンスに似合いそうなのに…)、一番のマイナスポイントは、敢えて書きますが、最後の最後の、クリフハンガー的な2分ぐらいのおまけが、すべてを台無しにする内容だと思ったから。ラスト、監督名だけ入った黒バックのクレジット画面が出たところで、このドラマはすっきり終わってほしかった。
 韓国ドラマはもはや第2シーズンへの含みを持たせずには終わらせられないのか?! ネット配信が生んだ悪癖だと思う。
 そもそもシン・ジュンワン弁護士は、なぜヒョンスを助けるのかという、たびたび出てくる問いに正面からは答えていないので、そこがこのドラマのちょっとした弱点ではないかと思いながら見ていました。「ヒョンスの容姿で判断したのではないはずだ。ジュンワンが最初に見て取ったと言っているのは、ごく表層にあるもののことではないはずだ! ルッキズムではないはずだ!」と思いながら見るしかないわけなのです。そう信じられなければ、ジュンワン弁護士とチーム長の偏見は方向が逆なだけでまったく同じものじゃないですか。それをぎりぎり信じられることがこの「ある日」を見るうえでは大事な柱なのに、その柱がもともとちょっと弱いような。それなのに、もしシン・ジュンワン弁護士がヒョンスの次に目を留めて助けようとする依頼人がまたもや……だったら、私にとってはその柱はポッキリ折れてしまいます。だから、ドラマの最後の最後のおまけ部分は、たんに蛇足だというだけでなくて、完全に負の付け足しだと思う。
 オリジナルの英国版criminal justiceも観ましたが、どちらも甲乙つけがたいです。主人公が捕まるまでのいきさつはほとんど同じで、韓国語版ではオリジナルをかなり忠実になぞっているのですが、公判や拘置の段階になると、それぞれの国の問題を題材に取り入れた展開になって、内容がけっこう違ってきます。英国版criminal justiceもとてもよいので、ぜひ字幕をつけて配信してほしい。そもそもこのドラマはベン・ウィショーの当て書きかと思うほど、ウィショー君も役にハマっている。それと英国版のほうがある意味、より社会派という感じです。
伊賀坂のぼる

伊賀坂のぼる