Arata

星新一の不思議な不思議な短編ドラマのArataのレビュー・感想・評価

3.9
Filmarksのタイムラインで見かけ、気になったので鑑賞。

ショートショートの天才、星新一さんは大好きな作家さん。
個人的には、特に「空への門」と言う話がお気に入り。今シリーズには未収録。
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宇宙飛行士を夢見て、あらゆる犠牲を払い、青春時代を学業や体力作りに捧げ、いよいよ努力の末に夢が叶うと言う男が耳にするのは、「飛行技術の進歩により、これからの時代は、一切の努力無しに宇宙へ行ける様になりました!」と言う皮肉な話。
努力が全て報われる訳ではないと言う事、そしてその努力のやり方が間違ってはいないか、目の前のやりたい事を諦める事が、果たして夢の実現に繋がり、ひいては幸せへと導かれているのだろうか、などと言った事も感じられる短編で、シニカルでアイロニカル、それでいて哲学的、クスッと笑えてゾッとする、そんな作品を多く残した作者の真骨頂を感じる事が出来る。
そして現実世界でも、実際にそれに近い事が起きていると言う事も興味深い。
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いわゆる、タモリさんがストーリーテラーを務める「世にも奇妙な物語」の様な世界観で、過去には何作も星新一先生原作の話が「世にも〜」で映像化もされている。


今シリーズでは、そんな星新一さんの原作を、原作が書かれた当時とも、映像化された現代とも違う、近未来の様な、並行世界の様な、不思議な世界観で描かれている。

原作が書かれた当時には存在していなかった、インターネットやスマートフォンなども効果的に登場していて、現代的にアレンジされていたのも、初見の方には易しいのではないかと感じた。
そして、そう言う現代的なアイテムが登場しようとも、作品の核となる部分が揺るがない様を目の当たりにして、原作ファンも喜ぶのではないかと感じた。現に私は楽しんだ。


ただ一点、今シリーズでは「目が覚めると荒野に1人」と言う設定で始まる作品が多く、若干の単調さを感じた点が気になった。


各話とも、とても豪華な俳優陣の絶妙な演技、セットやロケ地なども大変魅力的な背景だったのも相まって素晴らしい。
特に、水原希子さんのボッコちゃんは、彼女以外には考えられない程ハマり役に思えた。


場合によっては、やや短過ぎるかなと感じる程で、気軽にサクサク観るのには丁度良いと思える。

大作を期待していると、拍子抜けするかも知れない。

しかしながら、原作の短い文章の中に交錯する悲劇と喜劇の絶妙なバランスと言う意味で考えると、短編ドラマで映像化したと言う点も、大変に素晴らしい。

願わくば、2時間の枠などで数本収録、不定期にでも良いので、継続していって欲しい。
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