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THE DAYSのbeachboss114のレビュー・感想・評価

THE DAYS(2023年製作のドラマ)
5.0
ナメてたわ。菅●直人のクソっぷりの再現しか期待してなかった自分が恥ずかしい。もう、途中から言葉を失って黙ってしまいました。日本とか世界とか関係なく、人として見ておかなければならない作品。

にしても、やっぱり、さんざん現場を引っ掻き回して、人には死ねと言っておきながら、いまだに生き恥を晒し続ける左巻きパフォーマンス政治家のクズっぷりは再確認できた(演じるのは、白い小日向か黒い小日向かで言えば後者の方。顔つきはほとんど中村梅雀に)。

現実世界であれ映画の世界であれ、歴史や文化の汚点でしかない国賊の話なんかはさておき本題。

手に汗握るとかじゃなく、体ごと押さえつけられて縛られるような息苦しさ。喩えは悪いが「真綿で~」とか「枕で~」とか、江戸時代の「石抱」みたいな。

体感時間の長いこと長いこと。1話1時間ですらいつ終わるか分からないほどヘトヘトに。本当、見ていてツラくなるから、何度も脱落しそうになるんだけど、第3話の後半ぐらいから画面に張り付いたまま「しゃべりかけないで」って状態になる。

ここまでのリアリティでさえ実際の修羅場の何十分の1なのかと思うと、放射能をダシにしたハリウッドのディザスター映画やヒーローものなんてウソ臭くて薄っぺらくて見ちゃいられない。

何より、抑えた演出で煽らないのがいい。静かで丁寧な描写がヒタヒタとした緊張感と恐怖をもたらす。暑苦しい演技の安っぽい「絶叫系ヒロイズム」には陥らない。その点、のっけから出演者全員がハイテンションで大声出しまくるザマがこっ恥ずかしい映画版は、もはやSF。ゴジラやウルトラマンの域。

そこは冒頭の地震のシーンから徹底されていて、各人の地味なリアクションと常に血走った涙目で表現。

中でも、一般人と違和感のない気配で画面に収まる役所広司の存在感が、映画全体のトーンを制御し支配している。変に自己主張する役者もいなくて、それぞれが分をわきまえながらのベストワークで見事なアンサンブルを形成している。

個人的には、いちいち頷くリアクションが絶妙な東電社長の小倉一郎、スッピン晒して黙々と鶴を折り続ける石田ゆり子、ポンコツ首相にネチネチいじめられる吹越満あたりを隠れた名演に認定。

さらに、名作には必ず顔を出していると言われるでんでんの姿が見当たらなかったが、最後の最後にいかにもな役柄で登場して、しっかりおいしい場面をさらっていく。

現場の修羅場だけじゃなく、騒ぐしか能のないマスコミや、ネット掲示板に無責任な書き込みする連中、それに踊らされて安い正義感をふりかざすコメンテーターといった外野の描写もそれぞれが自然な流れで挿入されており、とって付けた感がない。もちろん、昔の怪獣映画みたいに日本で働く外国人俳優が出てきてシラケることもない。

そんなこんなで、パニック(ディザスター)映画でもあり、怪獣映画でもあり、ホラー映画でもあり、戦争映画でもあり、企業映画でもあり、ヒーロー映画でもあるわけだが、そのどれもが突出することなくバランスよく制御され、上質で品の良い人間讃歌に仕上がっていた。あかん、また、思い出し泣き。


余談だが、字幕を出しながら見ると、中身のないことをキビキビと言うのだけが取り柄だった首相の低能さが際立って溜飲が下がります。どんだけ嫌いなんだか(笑)。

あと、たびたび挿入されるタバコを我慢する描写や、主人公がタバコの害について述懐する辺りに、ガンの原因を放射能のせいだけにしようとするタバコ業界に一矢報いて痛快。くたばれヤニカス。
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