山岡

ブラッドハウンドの山岡のネタバレレビュー・内容・結末

ブラッドハウンド(2023年製作のドラマ)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

傑作ポリスアクション『ミッドナイト・ランナー』のキム・ジュファン監督最新作。

最高だった。1,2話を2日で見た後、3話で止まらなくなり最後まで一気見してしまった。韓国ドラマは今まで全く見たことないが、アメリカのテレビシリーズの名作群に引けを取らない素晴らしいドラマだった。

まず、『ミッドナイト・ランナー』とかなり共通する部分が多い作品だと思う。正反対な生活の青年男性2人の友情物語、夜のソウルを舞台にした暗くも爽快感のあるチェイスシーン、日常に根差したコメディ要素、大興奮のサスペンス要素、極悪の敵など枚挙にいとまがない。僕が『ミッドナイト・ランナー』で好きだと思った要素がより洗練された形で映像化されている。
また本作は、韓国の漫画作品が原作となっており、ハルクみたいな怪力男や刃物の使い手の五人衆など通常のドラマのリアリティを超えたギミックも大きな魅力の一つと言える。

エピソードごとにアクションの見せ場がきちんと用意されている点も評価したい。美しくパンプアップされた筋肉を持つ2人のマッチョな若者による肉弾アクションは非常に重量感があるだけでなく、テンポがよく、サスペンス要素も強く全く飽きない。どの回も素晴らしいが、主人公二人とヒロインが乱闘する4話との五人衆の生き残りである最強の2人が壮絶な死に様を見せる6話はシリーズのピークと言えるだろう。

見応えのあるアクションシーンの間に執拗にインサートされる食事シーンもアクションと双璧をなす本作の重要な要素である。単に見た目が美味しそうで韓国料理が食べたくなる…というだけでなく新しい仲間ができるたびに主人公たちが同じ釜の飯を食うことで、主人公チームの連帯感を手際よく表現している。敵であるキム・ミョンギルの会食シーンがなくほとんどが雰囲気の悪い飲酒シーンばかりというのも良い対比になっていると思う。また、視聴者が重厚なアクションのつるべ打ちに疲れないよう、緩急を作る役割も果たしている。個人的にはベスト食事シーンとして1話の主人公2人が初めて一緒に焼肉を食べるシーンを推したい。自然な会話の流れで彼らのキャラクターを説明しつつ、焼肉を小道具として使って時折ギャグを挟みながら彼らが親友となっていく様子を手際よく描いており、鳥肌ものの名シーンだ。

肝心のクライマックスの7,8話はヒロインが降板して急遽ストーリーが書き直されたこともあってか、やや駆け足感があるが、主人公2人の心情の変化を筋肉の進化を使って表現する手法やアーチェリー娘など見どころも多くあった。6話までのテンションをさらにと超えると歴史的名作となっていたと思うと残念な気もするが、7,8話も通常のドラマの水準を超えた面白さであるので、総合的に見て年間ベストクラスのドラマであるといって差し支えないと思う。
山岡

山岡