伊賀坂のぼる

カーテンコールの伊賀坂のぼるのネタバレレビュー・内容・結末

カーテンコール(2022年製作のドラマ)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

第15話までは、よく出来たドラマだと思って見ていました。余命3か月の、孫に会いたがっている老婦人に偽の孫を引き合わせる(本物も見つかっているのに!)というのは、すごく罪深いし、計画した人も加担した人も倫理観がどうかしていると思ったが、結末までにそのことも落とし前がつくのかな?と期待して最後まで見続けました。

第15話までは、その期待を引っ張られるぐらい、話もよく出来ていたし、カン・ハヌルさんの演技とキャラクターには、一抹の疑念をねじ伏せるぐらいのパワーがあった。途中で挿入された、ムンソンとグムスンの短い接触のエピソードのニュアンスもよかった。

だから最終回、たくさんの問題を見事なマジックのようにきれいに回収してくれるのかと思いきや……第16話ですべてが「今までのみんなの葛藤は何だったの?」というぐらい急にイージーに、ズブズブの帰結に着地した。すべてを台無しにする最終回。

舞台の上でジェホン(偽の孫)とグムスン(余命僅かな祖母)が抱き合い、ムンソン(本当の孫!)は客席で拍手って……酷い。ムンソン可哀想すぎる。誰のための舞台だったんだろう、ジェホンの自己弁護のため? あそこでもし、ジェホンがあの舞台を自分の檜舞台にするのではなく、ムンソンとグムスンが抱き合えるような「カーテンコール」をジェホンが用意していた、という展開だったなら、最終回の評価はかなり違ったのに。

ホテル売却とかセヨンの結婚問題とかムンソンの奥さんの危機とかいろいろ微妙だったはずなのに、第16話で急に何の緊張感もなくなり、特段のカタルシスもなく和解した。

そういうわけで、人には勧められない。でも、見ないほうがよかったとまでは思わない。
南北の離散家族が再会可能な残り時間は少なくなっているし、再会できても互いに顔もわからないほど長い時間離れて生きてきたことと折り合いをつけるのは容易ではない。今、そういう時間的限界の局面に来ているという現実を考えさせてくれたという意味では、見てよかったと思う。
伊賀坂のぼる

伊賀坂のぼる