割烹

ゆりあ先生の赤い糸の割烹のレビュー・感想・評価

ゆりあ先生の赤い糸(2023年製作のドラマ)
4.1
菅野美穂主演、侍のようなまっすぐな性格をしたアラフィフの主婦という設定だが、田中哲司演じる旦那が突然の脳梗塞で寝たきりになり、同時に鈴鹿央士との同性愛不倫が発覚するという衝撃的な幕開け。
やがて、愛人疑惑のある松岡茉優とその二人の娘も転がり込んできて、家にいる姑の三田佳子も加わり、みんなで寝たきりの田中哲司の世話をするという、介護、不倫、同性愛、嫁姑、格差婚といった現代のセンセーショナルなテーマを全部入りにしたプロット。
家族でも家族以外でも介護を大人数で分担し合うことでポジティブに取り組むことができるというのは、現代における幸せの一つの形であること、さらにそれを実現するには、他者との境界線をできるだけ手前に引いてしまう現代的個人主義ではなく、家族的関係性を他者にも拡大できる人間的おおらかさが必要であることを描いている。
さらに20代バツイチ子持ちイケメン木戸大聖との年齢差のある恋愛が始まる。菅野美穂が50には見えないために画面上には大きな違和感はないものの、アラフィフ向けの都合の良い少女漫画的ストーリーという突っ込みは免れない。
しかしながら女はいくつになっても乙女であって、菅野美穂の乳がん発覚後、若い木戸大聖に2回目に別れを告げるくだりなどは、単純な少女漫画のヒロイニズムを超えて、40代女性の美しい生き方の一つの例を示すことができていると思う。
不倫や同性愛といったセンセーショナルなトピックを扱いながら、それらを単純なゴシップやメロドラマに矮小化せず、タフな女性のモデルである主人公の生き様を通して、さまざまな示唆を与えてくれる良作。
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