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ペイン・キラーのbeachboss114のレビュー・感想・評価

ペイン・キラー(2023年製作のドラマ)
4.0
「痛み」=「人間の本質」を知悉した連中による狡猾なキャンペーン。そこに無自覚に加担してしまったお調子者たちと、自らドツボにハマって行く無教養な底辺住民と、雰囲気に流されてババを引かされてしまった善意の一般市民の悲劇。

一貫して描かれていくのが「イノセントであることの罪」。目標ややりがいに対してのイノセント。人間を数字に変換することに対してのイノセント。一旦、数字に変換された命は換金され、再び元の命に戻ることはない。これらの過程で知らず知らずのうちに失われていく「他者の痛み」と「思いやり」。

大手製薬会社のMRがやっていることはスラム街のドラッグの売人と変わらず、前者は称賛されるが後者は逮捕されるという指摘は言い得て妙。

それにしても、アメリカの製薬会社のMRって、あんな化粧品や健康食品のマルチな訪問販売員みたいなレベルなのか? 映画的な誇張なのか? あれが実態だとしたら、あんな連中に乗せられて処方する医者の方がどーかしてる。

そういう意味では、「USA!USA!」「Touchdown!yeah!」なアメリカならではの国民性が招いた悲劇とも言える。このオピオイド危機にしても、サブプライムローンにしても、バカのレベルや規模や勢いがアメリカン・ドリーム級だわ。

邦題(『死に至る薬』)はクソだけど、原題(『Painkiller』)は秀逸。ドラマではフィジカルなものからメンタルなものまで、「痛み」とそこからの解放についての考察が繰り広げられるので、一旦見始めたらその葛藤のサイクルに囚われて抜けられなくなる。

ただ、このドラマの欺瞞的な部分は、薬害の責任を、もはや企業としとは死に体のパーデュー1社と創業者一族にのみに押し付けて、バリバリ現役の超大手ジョンソン&ジョンソンほかの製薬会社には忖度して名前を伏せていたり、コンサルとして関与していたマッキンゼーの存在に全く触れていない点。正義の味方ヅラして、まだまだ強大な力の印象操作には、しっかり加担。例によって見てみぬフリで傍観者を決め込んでいたマスメディアと同じ。

以上、結局、コロナワクチンを1本も打つことなく乗りきった日本の中年オヤジが上から目線で I told you.
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