こたつむり

神の舌を持つ男のこたつむりのレビュー・感想・評価

神の舌を持つ男(2016年製作のドラマ)
4.0
★ 僕の人生 あなたの人生
  交わるために必要なのは笑顔と殺人
  そして少しの湯煙旅情 

視聴率3%台の衝撃と伺って鑑賞。
…だったのですが、いやいやいや。面白いじゃないですか。サスペンス好きとして、またコメディ好きとして、見逃していたのを後悔するレベルでした。

確かに序盤は微妙だと思います。
独特のノリと世界観はハードルが高いし、人間関係は説明不足。役者さんも完全に馴染んでいるとは思えず、演出はアクセルとブレーキを間違えている印象。

そして、何よりも問題なのが“舐める”行為。
衛生的に、そして生理的に拒否したくなるんですよね。しかも、ふんわりとエロティック。向井理さんも意識して“無邪気な”主人公を演じていますが、やはりフェロモンが漏れていますからね。“毛を剃る”くらいの気合があれば、もう少し違ったと思うのですが…。

だから、苦情が来たのでしょう。
途中から磨りガラスのような映像処理が施されていました。ただ、時は既に遅し。最初に定まった評価は固定観念を作り、とても高いハードルになってしまったのです。

でも、そんなハードルを乗り越えれば。
そこに待つのはサスペンス好きにとっての楽園。実際に3%台の視聴率だった第6話からググッと面白くなるのですから…いやぁ。人生って何があるか分かりません。

特に土曜ワイド劇場風味の7、8話。
そして、火曜サスペンス劇場風味の9、10話。2サス(2時間サスペンスドラマの略)に育てられた僕としては、この4本は至福の時でした。

あと、旅行に行きたくなる演出も良いですね。
6話の舞台となった大山は近場なんで、周辺の状況が許せば日帰りで行けるんですが…うーん。早くコロナ禍が終息しないかなあ。

まあ、そんなわけで。
堤監督構想ン十年…というのはギャグではないか、本当は温泉街に行きたかったのではないか、なんて穿ってしまう作品ですが、サスペンスとコメディのバランスは絶妙。人を選ぶのは確実ですが「つまらない」と切り捨てるのは勿体ない話。「住めば都」と言うくらいに、ハマれば彼らと別れるのが切なくなる佳作です。
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