#1
「彼女は、ここにいる女子たちとは明らかに違う。感情的に泣くことなんてないだろうし、自立していて自由で大人だ。」
「彼女すごいんだよ。なんでも自分で決めるんだ。提案じゃない、決定なんだ。」
「″人と人は空気で惹かれ合う。″年齢や容姿、あらゆる諸事情の前に、空気で…。それが、僕が彼女に教わった最初のことだった。」
#2
「きっと、人妻を誘うのは簡単だ。この人たちは、楽しみに飢えている。」
#3
「詩史さんはいつだって僕を一瞬にして幸福にするんだ。」
「音楽で重要なことは、何を聴くかじゃない。誰と聴くかよ。」
「結婚して良かったことは、一人で夕食を食べずに済むことよ。」
「結局彼女が選ぶのはあの人。今日聴いた演奏も、バーの喧騒も、彼女の綺麗な手も、全て暗闇に飲み込まれたように消えた。残ったのは苦い痛みだけで…。」
#4
「年上の女のいいところは、金に余裕があるとか、将来について深刻ぶった顔で聞いてこないとか、そういうことじゃない。無邪気なところだ。あいつの言う通り、俺はあいつとは違う。本気になることなんてないし、捨てるのは絶対 俺からだ。」
「まるでお似合いの夫婦みたいに、僕の知らない話をしている。その余裕ぶった顔が最早 滑稽だ。」
「恋ってさ、もっと楽しいものだよ。そんな風に苦しむためにするものじゃない。」
#5
「俺たちまだ21だよ?これからどんどん可愛い子に出会えるじゃん。」「可愛いってだけで人を好きになれるの?」
「あの夜は、残念なんてものじゃなかったわ。私の中の別の誰かが、どうしようもなく あなたに会いたがってた。」
(僕が欲しいのは、この時間だ。詩史さんと過ごす時間は、家にいる時とも大学にいる時とも違う。どこにも属さない僕がいる。ありのままの自分。僕は この時間がたまらなく好きなんだ。)
「僕は ようやく気がついたんだ。幸せかどうかは そう重要じゃない。詩史さんに与えられる不幸なら、他のどんな幸福よりもずっと価値がある。」
「誰かにとっての幸せが、他の誰かにとっても幸せとは限らない。」
#6
「耕ニくんに私を怒る資格なんかあるの?彼女にお母さんのこと知られるのが怖い?だったら最初から浮気なんかしなけりゃいいんじゃない?」
「ぶっ壊してやりたいの。不倫した人間が幸せになるなんてあり得ないでしょ?私が許せないのは耕ニくんじゃないよ。お母さんだよ。お母さんだけは絶対に許さない。」
#7
「私の好きだった耕ニを返してよ。透くんだって本当は全部知ってたんでしょ?平気で嘘ついたんでしょ。お前ら全員最低だよ。」
「会えなくて待っている時間は苦しいけど、何もない時間よりもずっと幸せなんだ。詩史さんと繋がっている時間だから。」
「詩史さんが僕くらいの時、何をしてた?恋人はいた?もっと早く生まれたかった。詩史さんが好きな本や好きな音楽に触れた時、僕も一緒に味わいたかった。」