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SUITS/スーツ ファイナル・シーズンのariy0shiのレビュー・感想・評価

4.0
2023年にもっともストリーミングされたプログラムとなった本作は、いわばニューヨークの法曹界を舞台とした『水戸黄門』である。

クローザーとして名を馳せる敏腕弁護士ハーヴィー・スペクターが黄門様なら、ハーヴィーに憧れるルイス・リットは助さん、偽弁護士として物語前半の枢要な役割を担うマイク・ロスは格さん。さしずめ、由美かおるの“かげろうお銀”はドナか?などなど、お馴染みのメンバーが登場しては、ある一定のパターンで物語は進展していく。

ピンチを脱するために法の網をくぐる強硬な手段を使い、エゴ剥き出しで仲違いしながらも最後には仲直りして切り抜ける、というお決まりのサイクルを繰り返す。1、2話スキップしたところで、そこまで大勢に影響は出ない。

とはいえ、ついつい引き込まれて観てしまうというのも、『スーツ』と『水戸黄門』の共通点だ。

生き馬の目を抜くような激烈な弁護士界にあって、一癖も二癖もあるライバルや策略家、検事、クライアントらと丁々発止とやり合うハーヴィーたち。パターン化されたストーリーではあるが、その内容や展開には十分なエンターテイメント性がある。

そして何より、テーマが重すぎないのがいい。もともと2011年から2019年まで放送され、シーズン9まで続いた人気テレビドラマではあるが、その少し前に、やはり高い評価を受けた『マッドメン』のヘヴィーさ(哲学的な難解さ)に比べたら、本作には誰もが楽しめる“気軽さ”がある。

シーズンが進むにつれ、まだ若かった役者たちの顔からも、それなりの年月を感じられるようになる。こうした長期にわたるキャラクターの刷り込みも、またこの作品の魅力のひとつになっている。あまりに長編ゆえに、観終わった後の寂しさが身に堪える。
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