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その「おこだわり」、私にもくれよ!!のnorisのレビュー・感想・評価

4.5
「あまちゃん」が生んだ4人の女優で一等可愛いと思うのは、よく見ると顎が割れている#松岡茉優 である。リアルタイム視聴もしたのだが、Netflixで最初から全部見直してしまった。やはり本作はこれまでのところの松岡茉優の最高傑作と思う。

「人は騙す、人は隠す…」という意味ありげな歌詞をバックに松岡と伊藤沙莉がじゃれつく幸福なオープニングは、毎回出色の出来で、息をのむのだが(風船ガムを噛む伊藤の表情が素晴らしい)、8話以降はエンドロールがそのメイキング映像になり、二人を撮る移動レールの上のキャメラが映り込み、それでも松岡は2台目のメイキングキャメラに反応してウインクする。そうしたメタなあり方を作っておきながら、あえて松岡と伊藤に自由にふるまわせるのが本作の見どころである。

本作のメタ構造とは、『その「おこだわり」、俺にもくれよ!』という清野とおるの原作漫画を中心にした、漫画<バラエティ<ドキュメンタリー<ドラマという4重構造である。

まず、バラエティ『その「おこだわり」、私にもくれよ!』の司会者として、プライベートでも仲が良いと伝えられる(このあたりからモキュメンタリー調になる)松下と伊藤が登場する。
ところがこのバラエティ番組は撮影中にゲストが車に轢かれたり、伊藤とデキたりしてありえないアクシデントを連発、こだわりのない男が登場して空中分解し、スーパーバイザーと名乗る八嶋智人が仕組んだドキュメンタリーであることが明かされる。

同じ清野の「東京都北区赤羽」(松江哲明監督)も、山田孝之を主人公とした同様の趣向のドラマだった。本作で伊藤沙莉 が「花嫁斬り」なる架空の映画のメイクをしているのは、山田が演技を断念した架空の映画「己斬り」へのオマージュだろう。

山田孝之のドラマと同じように、松岡は俳優廃業を宣言してモー娘。への加入を果たし(鞘師里保押しというのは本当なのだろう)、ドラマは大団円を迎える。しかし、「東京都北区赤羽」の中コマでも山田がBOSSのCMキャラとして現れて煙に巻いたのと同じように、すでにその頃には夏のNHKドラマ「水族館ガール」の番宣が始まっているので、やはり視聴者は狐につままれるという案配である。
ただ、モー娘。のくだりが3回分もあるのはいかにも長すぎ、二度見るのはちょっと辛かった。

エンドロールを二人の“おこだわりダンス”にしておけば、間違いなく「逃げ恥」の恋ダンスより先に話題になったのに、と残念。それにしてもこの二人、子どもっぽすぎないか(当時21歳と22歳)。
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