株式投資や個人投資家を扱った日本のドラマを探していたところ、先輩投資家からご紹介いただき本作にたどりつく。
ストーリーもさることながら、板やチャートの見方、相場格言、信用取引といった専門性の高い情報を、ナレーションやテロップを使わず視聴者に追体験させる作風には好感を持った。少なくとも株式投資初心者の自分には学びとなった。
主演が長い台詞を覚えきれないと思われる箇所が多く気の毒であるが、脚本が良く、上手い人が脇を固めているので違和感がない。映像や演出には時代を感じるも、後半からの怒涛の展開、伏線回収（「吾輩は猫である」まで回収するというありがたみ）、余韻の面白さ、心理描写には22年前の作品とは思えないほど普遍性があり、どちらかというと配信向きに思える。にも関わらず現時点で無配信、DVDも廃盤となっている。スポンサーとの兼ね合いで民放ドラマが企業の不正を扱うのは難しいそうだが、他にも入り組んだ事情があるのだろう。
配信時代以前のドラマに無知なため断言はできないが、本作の脚本を手がけた人物は「ハゲタカ」で成功して以降、金融関係の作品には積極的に関与していないようである。それどころか近年は消されたも同然のようだ。数少ない個人投資家を扱ったこの作品までもが同様になかったことにされているのは惜しいといわざるを得ない。
蛇足になるが、早世した私の母は仕手株を見抜き天井で売り抜けたという伝説の持ち主である。このドラマは母が他界した直後に放送された。超年上好きの母は植木さんのファンだった記憶があるから、生きていたら私に薦めてくれたんじゃなかろうかと思いを馳せている。
※「新しい王様」の感想も含まれています。
