幾度も鑑賞しているが、7,8年ぶりに再見。
野沢作品でもっとも好きなのは「恋人よ」だが、もっとも完成度が高く、傑作と称して良いのは「眠れる森」に違いない。
複雑に巧妙に絡み合ったミステリー、非常に情緒的で脚本家の持つ情の深さが物語によく反映されていて、なおかつ毎話スリリングで謎めいた仕掛けがあり、ラストまでその新鮮さを損なうことがない。
大変悲しく美しい作品だ。
再見してこの作品がどれほどよくできているか、改めて発見があるのだが、今まで犯人の異常性がどこからあらわれたのか気が付かずにいたが、それは幼い頃母親に与えられた傷に大きく寄与している。
前半部分やタイトルバックでおおかた出現している鍵となるパーツが後半や最終話で繋がっていく過程も素晴らしいが、どの人物も犯人として疑える要素を作り、垣間見せ、それをひとつひとつ洗い出し解消していく手腕は見事。
冷静に考えると救いようのない結末ではあるが、眠れる森の美女になぞらえたラストは、多くを語り尽くすことなく、観る側に余白と想像を残し、なんとも綺麗な余韻を残した。
生きて、生きて、生き続けるという言葉を残した野沢尚が自ら命を絶った現実は悲しい。
野沢作品をもっとたくさん観ていたかった。
