山岡

スタートレック:ディープ・スペース・ナイン シーズン7の山岡のネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

シーズン6最終話はジャッジアが殺され、シスコがDS9を去るという『帝国の逆襲』的なエンディングだった。しかもドミニオンとの戦争は終わりが見えず、パーレイスなどという悪の化身まで現れる始末。完全にカオスな状態の中、どう物語を閉じるのかと思っていたら…シーズン7で見事にこの長い物語にケリをつけてくれた。これまでも、DS9では3話や6話をかけて長いストーリーを展開することはあったが、シーズン7のEP17からEP25の全9話に渡る長大なドラマはまさに圧巻。とにかくこの最後の9話が素晴らしいのだが、前半のエピソードも良作がいくつか見られた。

まずはなんといっても、EP8 「戦争の影-AR558攻防戦-」だろう。シスコをはじめとしたDS9クルーたちがドミニオンの通信施設を占拠したAR558で文字通りの死闘を繰り広げるエピソード。戦場のリアルな悲惨さ伝えるS5EP4「戦う勇気」に似た趣向の内容で、コメディリリーフのノーグが足を失うという目を覆いたくなるような展開が印象的だった。戦闘開始のタイミングでべシアがヴィク・フォンテーヌのジャズソングを流すシーンがあるが、真っ暗で地獄のような戦場と平和な楽園への憧憬とのギャップがあまりにも強烈。

かなり異色作ではあるもののEP15 「アドリブ作戦で行こう!」もシーズン屈指の傑作エピソード。ヴィク・フォンテーヌの店を救うためにDS9クルーがチームでマフィアの金を強奪するという内容で、サスペンスフルな展開に満ち、『オーシャンズ11』ライクな良質なコンゲーム作品となっている。ホロスイート系のエピソードは感情移入できないものが多いが、今回は何度もクルーの危機を救ってきたヴィクの店を救うという納得できる目的があるので、視聴者もある程度真剣に見ることができるようになっている。また、ドミニオンとの最後の戦争を前にこのようなクルーの結束を示すエピソードを置くことで、後のドラマへの感情移入に大いに役立っている。EP4「がんばれ、ナイナーズ」も同じような趣向のエピソードだが、全体的なクオリティを考えるとこちらに軍配が挙がるだろう。

そして何と言っても、EP17「彷徨う心」〜EP25「終わりなきはじまり」に至るまでの一連のエピソードの素晴らしさはシリーズ屈指のものといえるだろう。ドミニオンとの戦争、カーデシアの行末、預言者とシスコの関わり、そしてパーレイスに囚われたデュカットなどあまりにも多かった課題すべてに綺麗な決着をつけている。さらに主要キャラたちが抱えていた様々なドラマにも一応のエンディングが用意されている。まるで約10時間の長大なボリュームの最終話を見ているかのような印象を受けた。ヴィク・フォンテーヌの「The Way You Look」を聴きながらクルーが戦勝を祝うシーン、さらに同曲をBGMに各クルーの回想シーンがインサートされる場面では思わず涙を流してしまった…どんな名作ドラマでも、最終話がショボかったり、或いは変に気合いが入りすぎて空回りしたりするものが素晴らしい最終回というのは得難いものがある。DS9は物語をきっちり終わらせ、さらにキャラクターと視聴者への愛に満ちた最高の最終回を作り上げた。

4月にシーズン1を見始め、約4ヶ月かかってラストまで辿り着いた。スタートレックらしい理想主義とスタートレックらしからぬ現実主義が交差した見事なシリーズだった。TOS、TNGのキャラクターに負けないくらいDS9クルーのことが大好きになってしまった。TNGと違って続編が作られていないことは非常に残念だが、ここまで素晴らしい最終回を見せられたら文句は言えない…。
山岡

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