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百年の物語のardantのレビュー・感想・評価

百年の物語(2000年製作のドラマ)
4.0
『そして彼女と僕は出逢った。十年ひと昔、言うなればそのひと昔をようやく語れるようになった頃、十回目の春の訪れ。何もかもが輝いて見えたあの頃。彼女は僕の「特別」だった。特別な人。特別な春の始まり。彼女は、僕の人生に極彩色の波紋を起こす、唯一の人だ。』(狗飼恭子「冷蔵庫を壊す」)。

図書館の一角で、iPodで中森明菜の『CRUISE』を聞きながら、『冷蔵庫を壊す』を手にしていた時、昨日観た『百年の物語』はなんだったろうと考えてしまった。
20世紀が終わる頃か、21世紀が始まる頃に放映されたこのドラマは、題名のとおり、1900年代初期から2000年までの松嶋菜々子が演じる母娘3代の壮大な物語で、三夜にわたって放映されたのだろう。
地主の娘と小作農の子供とのほろ苦く、恋とは呼べないほどのほのかな恋、一枚の絵を物語全体を流れるモチーフに使った、なんとも昔風のドラマだった。
第一夜は橋田壽賀子脚本で、彼女ならでは、安心してみることのできる物語を。戦後を題材にした第二夜は冗長気味だったが、第三夜は遊川和彦脚本のちょっとコメディぽく、「マッチ売りの少女」の物語をメタファーに使った素敵なドラマだった。
松嶋菜々子はドラマの中でどんどんきれいになっていった。

そして、今のTV界で、こんなにお金と時間をかけたドラマの制作は無理だろうと思った。
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