Benito

トッカイ ~不良債権特別回収部~のBenitoのレビュー・感想・評価

3.9
【 不良債権特別回収部 = トッカイの熱い物語 】

WOWOWのドラマWにしては多い全12話からなる社会派の骨太な作品。

原作が清武英利の「トッカイ バブルの怪人を追いつめた男たち」または「トッカイ 不良債権特別回収部」というタイトルで出版されたノンフィクション物。

映像化したのは脚本:戸田山雅司と監督:若松節朗のコンビ。最近では「石つぶて」WOWOWや「ガラパゴス」NHKで組んでいて、リアリズムを追った社会派ドラマをやらせたら安定の組み合わせ。

70年代、大蔵省が主導し、銀行が出資する形で住宅金融専門会社(全部で8社)が設立され、"住専"と呼ばれていたのだけど、簡単に言えば個人向けの住宅ローンを主に取り扱う貸金業(実質大蔵省のOBの天下り機関)で、特徴は金利割高で融資審査が甘かった事。そんな中、不動産向け融資が盛んになった1990年代初めバブルが崩壊。地価下落で不良資産が増大、回収不能の不良債権が"住専"全体で約6兆5000億円!に膨らみ、1995年には8社中7社が行き詰まった。これに対し、政府が1996年に"住宅金融債権管理機構"を設立。ここからがトッカイチームが現れ、ドラマのはじまり。

そのドラマは、多様な俳優を起用してガッツリ作り込まれている。トッカイチームは伊藤英明、中山優馬、広末涼子、矢島健一、萩原聖人、弁護士の橋爪功。それぞれのキャラクター造形と次第にチームになっていくのは見応えあり。そして狡猾な京都の怪商には仲村トオル、ナニワの悪徳不動産王にイッセー尾形、他には 団時朗、渡辺裕之、篠井英介、佐野史郎、緒方直人などなかなかの顔ぶれ。明らかに実在した人物を連想できるキャラクターをドラマに取り入れた事は良かったし、当時の政権と大蔵省がバブル経済を作りだしたという指摘をして、トッカイチームの頑張りだけに纏めず描いたのはある意味挑戦的だっだと思う。

そして、、
全ては橋爪功演じる東坊平蔵(中坊公平がモデル)が言った "闘う相手は、悪質債務者だけでなく、彼らを野放しにした銀行や大蔵省、政治家全てだ " に、このドラマのテーマの根幹がある。こういう事をバシッと言える政治経済界のリーダーがいれば、日本は少しは変わっていたのかも。
Benito

Benito