すずき

テオレマ 4Kスキャン版のすずきのレビュー・感想・評価

テオレマ 4Kスキャン版(1968年製作の映画)
4.5
イタリア・ミラノの富豪の邸宅でのパーティ。
その出席者に、主催者の知らない謎の青年がいた。
彼は富豪家族と意気投合し、しばらくの間、邸宅に滞在する事を認められる。
居候の生活が続く中、富豪の家族と家政婦は老若男女問わず彼の魅力にメロメロ!
全員が彼に心を狂わすほどの愛を想う中、彼はある日突然、邸宅から去ってしまう…

パオロ・パゾリーニ監督の作品。
同監督の「ソドムの市」では、悪趣味さだけが目立ち、その手腕を最大限に感じる事は出来なかった。
だが、この作品は凄く良かった!
パゾリーニ監督、映画撮るの超上手いよ!…なんて、世界的に評価されている監督にとっては当たり前の事なのでした。

4Kリマスターという事で、映像が超キレイ!
特に色彩が素晴らしく、心象風景が色彩に現れていた。
キャラクターも、謎の青年以外も、みんな顔が濃くって、全キャラ存在感アリアリ。

ストーリーは、主人公の謎の青年が家族全員と関係を持つ前半と、攻略対象キャラのCG全て埋めたら青年は去ってしまい、残された家族達の苦悩と崩壊を描いた後半、という作り。
前半で存在感を示していた青年が、後半では一切出てこないという大胆な構成だ。

しかし、かの青年は何者だったのだろうか?
人間ですらないのかもしれない。
彼はサキュバスとかインキュバスとか、そういった類の「魔」だ。
ただし、彼が吸い取るのは人の精力ではなく、人の心。
彼に文字通り、心を奪われてしまうと、あとには何も残らないか、或いは狂気的な天啓を得るか。
愛が人を狂わせて、愛故に苦しむ。
そんな文学的なテーマが詩情豊かでした。