ミシンそば

蜂蜜のミシンそばのレビュー・感想・評価

蜂蜜(2010年製作の映画)
3.6
残酷だけど優しさも滲み出ている、ユスフ三部作最終章である、幼年期と少年期の間のユスフのお話。

吃音で本読みが苦手で父にべったりなユスフ、彼のことを心配する母、彼にとって一番頼りになる存在である父、皆ほとんど喋らない。
ユスフは明らかに人格形成の途上で、恐らく養蜂の仕事があんまり上手く行っていないであろう両親の大変さも分かっていない。 
嫌いな牛乳を母の目を盗んで父に飲んでもらってるところからも見て取れる。
これは前二作に比べればかなり分かりやすいメタファーだと思う。

ユスフにとっての一番古い記憶だけど映画としては最新。
ゆえに、「卵」や「ミルク」のころに見られた要素なんかも散見されてて、観ている者らに「未来にはこうなる、これが絡む」ことをカプランオールは理解してほしかったのだろうか。
自分にはそう映った。

全編を通して、無口な少年の狭い視野で進む話だから退屈でユスフの考えにも芯はない(ただし「まだ」芯はないって枕詞はつくが)が、牛乳を飲み干し、自分の歩調で前進を始めたユスフに対する周囲の優しい眼差しにはすっかりやられた。
(隣の席の子、いいやつ過ぎる…)

退屈な映画であることは間違いないけど、最後まで観たらベルリン国際映画祭で最高賞をなぜ獲れたか。
分かる人には分かる仕上がりになっている。
(カプランオールも恐らく、万人受けなど狙っていないだろうし)。

ちなみに自分はそこまで分かっていない。