akihiko810

そばかすのakihiko810のレビュー・感想・評価

そばかす(2022年製作の映画)
3.7
「恋愛感情がない、性欲もない。それが私で、一人で生きていけるし、そのことを寂しいとも思っていない」

アセクシャルの女子が主人公の映画。

これまで誰かに好意を抱いたことがなく、恋愛が何なのかわからない30歳の蘇畑佳純。志していた音楽の道で挫折したのを機に帰郷してコールセンターで働く彼女は、日々の業務に追われていた。そんな中、母親が勝手にセッティングしたお見合いで、結婚より友だちとしての関係を望む男性と出会うが…

期待ほどではなかったのだが、それなりには面白かった。
まず本作で思ったのは、「今時、これほど社会が恋愛至上主義なことあるか?80,90年代ならともかく」ということだった。勝手にお見合いをセッティングしちゃう母親も、さすがに昭和の遺物だろう。なんか価値観が20年は遅れてる感じがする。田舎なのかな?

まあ、男性に好意を向けられたら、いちいち「私恋愛とか無理なんです。アセクシャルなんです。」みたいに断って牽制しないといけないところがめんどくさいといえばそうなのだろうけど、趣味を充実させて恋愛(結婚)は二の次、なんて男女は今時、ゴマンといるのだから、今の時代にはそこまで重い悩みではないと思うけど。周囲が「恋愛一直線」なら本作のように悩むのだろうが…それははっきりと今時の価値観ではないだろう。

本作で一番面白かったのは、主人公・佳純が考えた「(政治的に正しい)シンデレラ」を児童に読み聞かせ(紙芝居)する場面。周囲の大人たちが「これ、なにこれ?」となり、佳純が日和って上映をやめてしまう場面。でも子供たちは続きが見たがる、というのは面白かった。

あとはお話し的にも「普通」な感じがした。コメディに振りきれるわけでもなく、悩みもどこか中途半端、という感じは否めなかった。

あと完全に余談になるが、主人公・佳純は「腐女子のつづ井さん」(エッセイマンガ)を読むべきだろう。恋愛なんか一切せずに、「前世からの友人」たちとまじで楽しく生きるさまがみれる現代の幸福論である。佳純に足りないのは「恋愛」ではなく、実はなんのオタクにもなれないという「オタク度」が足りないのだ。
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