金宮さん

正欲の金宮さんのネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

FUJIWARA SATORUは誰なのか?最後の方まで不明なつくりとなっており、実は稲垣さんですら性的嗜好について自己紹介はされていない。

「他者のフェティシズムがわからない(把握できない&理解できないのダブルミーニング)」

という作品主題にも誠実であり、副産物として観客をひきつけるミステリー要素にもなっている。

多様性がキーワードになると「じゃあ、どこまでが許容されるべき?」は必須テーマ。そのへんに関連した稲垣さんから妻へ放たれる持論。"システムバグ"という普通原理主義者がいかにも使いそうなワードをまぜて暴論っぽくみせておきながら、小児性愛者による犯罪も並行して描くことで議論をマイノリティ側ばかりに偏向させないのは丁寧なつくりだと思う。

となると、許容されるべき多様性のラインは?「他者に迷惑をかけない」だとした場合、"水フェチ"単体だと全く問題ない気もする。

じゃあ磯村さんは"水フェチ"だと実証されれば無罪になるのだろうか?その気がなくても小児性愛に加担しちゃってるから、なんか難しそうな気もする。

ここで多様性のもうひとつのキーテーマとなる「いかに折り合うか?」が登場する。磯村さんはコミュニティーをつくるというやり方に気持ちの折り合いを求め、結果違法に巻き込まれた。

マイノリティであることに甘えず社会に折り合っていけよ!は危険。マジョリティ嗜好であっても巻き込み事故になりうるケースは子供youtuberを用いて示唆されており、少数派の人たちにとってはより窮屈なことが想像に難くない。大変だが、折り合っていくしか仕方がない。本当に面倒だけど。

ーーーーーーーーー

少しだけ気になったのが登場人物、特に地元メンが基本的にハイパー無神経すぎて(徳永えりさんによる雑談ハラスメントっていう新しいジャンル!)、孤独がどうにもフェティシズム関係なく見えかねないという点。そもそも、ラジカルなキャラだらけなのは好みじゃないのです。

新垣さん磯村さんからはそうしか見えないとする説もあるが、だとすると現実にはもっと寄り添うサイドの人もいるよねーと思ってしまい、根本は人間関係をシャットアウトしたところに原因があるように思ってしまう。

問題の解像度を上げるためには「配慮ある相手でも(だからこそ)発生してしまう生きづらさ」を描けた方がよかったのかなーと思ったり。比較するのもあれなんですが、「そばかす」あたりはその点が素晴らしかったなあとあらためて。

ーーーーーーーー

子供YouTubeを頭っから否定するのもどうなん?と思いつつ、やたらとすすめてきたNPO男が適当ノープラン無責任すぎて笑ってしまった。あいつ収益もらってないか?

稲垣さんの肌感は間違ってない部分もある派なので、理論だて代替案を提示できればよかったんだろうなあと心にメモした。作中のお子様の場合は、結局は承認欲求となっておりインスタントにそれを得ようとしている態度や企画内容が問題なんだと思う。
金宮さん

金宮さん