お花畑のノンポリ人間、または意識高い系リベラリスト、あるいは国連中心平和主義者などを自認するような、緩んだメンタルの日本人は、必見の映画だ。
2021年末公開『ドント・ルック・アップ』的なブラックユーモアに満ちているが、本作の方がさらにリアリズムを追求している。世のリアリストは好物のストーリーじゃないかな。
役者陣の演技に現実感があるため、どんどんストーリーに引き込まれる。
ジュリアの猜疑心が強いヒステリーキャラ、アリの冷静な語り口、イーサンの良心的で平均的な感覚をもつインテリ教授、そしてひとクセある保守派かリバタリアンっぽいケビン。
ここ数年の世情を思えば、タイミングはバッチリだ。
オチの3段階解説は実際世界のあちこちで起こっているパターンである。いつ日本にふりかかってもおかしくない。
不気味な言い方になるが、明日沖縄や北海道で起きても「だからいっただろ?」って話で、たいして驚かない。
周囲の環境に耳をすませ、曇りのない澄んだ目で現実をとらえる者が、もっとも正しい解を導く。準備も怠らずに。
危機を回避できる者は、声のデカいヒステリーおばさんでもなければ上級国民でもない。実にシニカルな結末だ。
長さをまったく感じない。ショートドラマを見たような印象である。地味なタイトルだが、味わい深い。
最終カットはやはりああいう流れになるだろうね。