このレビューはネタバレを含みます
抗うことができない過酷な境遇に、罪がどんどんエスカレートしていく。
招かれたお家でお菓子をポケットに入れる程度なら可愛いものの、友達へのプレゼントとしてたまごっちを店から盗む。たぶん、癖になってますよね。
そして取り返しのつかない、殺人という罪すらも感覚がじわじわと麻痺していったんじゃないでしょうか。市子の環境がつらすぎて仕方がないと思ってしまいそうにもなりますが、やはり本人のためにもどこかで止まらなければ負のスパイラルに陥る。最後の殺人については監督はあえて「男女2人?男も?」という不条理を匂わせ、殺人への否定を観客の中に醸成したようにも感じる。
個人的に、ターニングポイントは高校時代の北くんの選択だと思います。彼に市子を救おうという気持ちがあったのは間違いないと思うのですが、一方で罪の共有という下心があったことも否定できない。遺棄することなく自首にうながすことができれば。高校生には難しいことは百も承知なんですが。。
誰かを救いたいという気持ちのとき、自分都合を完全にまっさらにできるか?とっても筋違いな感想な気もするのですが、そんな印象が深く残りました。
おそらく若葉竜也さん演じる義則はキャラ造形的に、過去を受け入れたうえで、市子のために自己を捨てさる選択をとることができたんじゃないかと想像します。
余韻がある終わり方もよいのですが、義則の覚悟を受けて過去と向き合い前を向く市子の姿も見てみたかったと、少しだけもやもやしました。
ーーーーーーーーー
・付きまとう過去との訣別という意味で、漫画「電波の城」を思い出しました。そういう意味でも、過去を知ったうえで寄り添ってくれるパートナー像を義則に投影しちゃったのかもしれません。