Uえい

アメリカン・フィクションのUえいのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.0
アカデミー賞の脚色賞を受賞して気になっていた。監督のコード・ジェファーソンはドラマ版「ウォッチメン」でエミー賞の脚本賞も取っていて、なるほど面白い訳だと納得した。

主人公モンクは黒人の小説家で、人種に関係ない内容で評価されたいが上手くいかないでいた。疎遠だった姉の死がきっかけに、現実逃避するかのようにステレオタイプな黒人のゲットーを舞台にした小説を書き上げ出版社に送りつけた。すると、それが大好評で、モンクの気持ちと裏腹に大ヒットし、映画化まで決まってしまう。少し前の映画界もこんな感じだったかなと思い出す、今だとLGBTを扱う作品もこういった形で消費されているように思えて、すごい皮肉を描いている。

モンクは別のペンネームを使い素性を隠していたため、実生活と作品が乖離していく。母の病気や弟の関係など家族間のトラブルも抱える中、モンクが審査員を務める賞の大賞に、その小説「ファック」が選ばれそうになってしまう。ここまでだったら単純なブラックコメディだったのだが、その先にメタ的な展開がちょびっとあるのがスパイスになっていた。

この最後のシーンが脚本賞を受賞した要素かなと思った。原作「Erasure」はヒットし、本作の映画化に繋がるが、その過程も批判的・メタ的にシナリオに入れ込まれている。どうやら原作も、モンクが授業で扱っていたフラナリー・オコナーの短編を再解釈した内容になっているらしく、ぱっと見では分からない大きな流れが隠れていた。
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