悪魔の毒々クチビル

サンクスギビングの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

サンクスギビング(2023年製作の映画)
4.3
「信じる相手を誤るな」

年1の祝日ことサンクスギビングに繰り広げられる殺戮を描いたお話。


ホラーファンなら大多数の人が知っているであろう、イーライ・ロス監督の最新作。
とは言え最近はホラーだけでなくキッズ向けのファンタジー映画とかも撮っているから、もはや老若男女に人気の監督と言っても過言ではない。とは言っていない。
上映日的に今作を今年最後の劇場観賞作品にしているホラーファンも多いのでは。かくいう私もその一人です。

元ネタは「グラインドハウス」のフェイク予告編で、あちらは80年代らしさ満載でしたが長編化となるこちらはバリバリ現代っ子スラッシャーです。
ただ予告編でもあった鮮烈な殺害シーンはある程度今作にも継承されているので、そこは安心。
と言うか元ネタ関係なく一つのスラッシャー映画として非常に出来が良いです。

まず冒頭のセールスデイ地獄からロス監督の悪趣味さが炸裂していて、手首は明後日の方向にへし折れるわ頭皮は引きちぎれるわでクソみっともない物欲が招く惨状をしっかり描いており、掴みとしては最高でした。
数日経ってから「こんなワッフルメーカーの為に…」とふと賢者タイムに突入した人多い気もするけど。

その後はサスペンス要素をきちんと加えながら真っ当にスラッシャーしておりますが、これまた痛々しさと悪趣味さと豪快さが入り交じったゴアい調味料のお陰でロス監督らしい印象的な作品になっています。
特に人体破壊描写はホラーでよくある「脆すぎる人体」システムを採用しており、最初のおばちゃん真っ二つのシーンは「それでそんなキレイにいくかね!?」と笑ってしまうレベル。だがそれが良いのだ。
一応犯人のカーヴァーマスクさん、斧を振りかざしている場面が多いんだけどぶっちゃけそこまで斧で殺してなくて、鈍器だったり電ノコだったりと結構バリエーション豊富な殺し方を見せてくれます。
パレードでの二次被害顔面貫通も凄く良かったし、丸焼きのシーンは食人メインの「グリーン・インフェルノ」を凌ぐ衝撃でした。
何が出てくるかはそりゃ観てれば分かるんだけど、その調理のされ方とかが思いの外きちんとしていて普通に引いたくらい。

あと個人的にはテンポの良さも魅力で、ほぼ全ての間が丁度良かったんですよね。
登場人物だとあの銃や弾薬売ってたあんちゃんが意外と良い奴な上に、主人公らの脱出に間接的にめっちゃ役に立っていたりで好きでした。
逆に新任の保安官とか、主人公だったらめっちゃ活躍する系のキャラがすぐ死ぬとかじゃなくてシンプルに出番が少ないのも笑えた。
今作のキャストはあまり知らない俳優が多かったんだけど、ジェシカのパパは観たことあると思っていたら「セルラー」のクソうざ弁護士ことリック・ホフマンでしたか。太ったなぁ。

ラストはもう一展開ありそうな気がしたのにしれっと終わっていまいちょっとガッカリしましたが、ロス監督が「これ以上のものは撮れない。思い残すことはない」と豪語するのも頷ける、ただゴアっているだけでない職人の拘りを感じさせる技巧派スラッシャーだったと思います。

てな訳で今年は例年ほど映画館には行っていなかったけど、良い締めでした。
来年はもうちょい劇場にも足を運びたいとは思っているんですけど、どうなることか。
と言う事で皆さん良いお年を。

あ、それとティム・ランベシスさん。
AUSTRIAN DEATH MACHINEの新譜も嬉しいですし、この間公開された新曲もクソ格好良かったんですけど、今年の夏にはミックス作業が終わっていたであろう
AS I LAY DYINGの新譜を来年は一刻も早くリリースしてください。(法が許してくれるのであれば来日も…)