ミシンそば

Hereのミシンそばのレビュー・感想・評価

Here(2023年製作の映画)
3.4
バス・ドゥヴォス監督作は当然今日初めて観た。
全体を通して静かな話の流れと、正方形の画面サイズ、パズルを埋めるようなエンドロールからして非常に独特。
ただ、シネ・リーブル梅田での上映順が本作→「ゴースト・トロピック」だったために、個人的にはこの作品を散文的だと感じた。
映画作家の紹介として、先に原型に近いものではなく発展形を提示するのは悪手だろうに。

ルーマニアからの移民で、一時帰国の準備をしている労働者と、中国系のルーツを持つ苔の研究者の、恋愛とまでは行かない些細な交流を描いた非常に丁寧な作りの、“詩”のような映画だ。
先週観た「パターソン」での永瀬正敏の言を借りれば「詩の翻訳はレインコートを着てシャワーを浴びるようなもの」、この「詩」に近い映画を散文的だと自分が感じてしまったのは、そこにあるだろう。
ブリュッセルと言う都会にポツンとある、共同農園(観ている時はなぜか自然公園か何かだと思っていた)を中心として、錘を付けた糸を飛ばし、戻ってくるまでを、詩を繋ぎ合わせたように続ける、振り子運動の連続。
自分にはそう映ってしまったのが残念だった。

何にせよ、移民人口が無茶苦茶多いことが、(理解度が低いまま観終わっちまったから)買ったパンフレットにて言及されていたベルギーと言う国だからこそ描ける、新たな人の在り方の形(単純な恋愛形式でない)であると思う。
終わり方の唐突さとかも含めて雰囲気はよかったし、これから市民権を得ていく形の映画だろう。

【追記】
5/4にシネマ203で再鑑賞。
また前半寝落ちしたが、二回目の鑑賞でシュテファンがブリュッセルに二度と戻らない可能性がゼロではないことが随所にちりばめられていることに気が付いた。