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成功したオタクのharuのレビュー・感想・評価

成功したオタク(2021年製作の映画)
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バーニング・サン事件や韓国文化についての知識がないと解釈が変わってくるのは仕方ないかも?でもドキュメンタリー映画としての画作りや構成がうまくて楽しかった

日本ではバーニング・サンにあたるような事件は表面化してないし(あえてわざわざ書くと大衆的に人気のあるアイドル歌手がドラッグを使って女性をレイプした動画をさらにグループチャットで金銭を授受しながら共有していた)、サイン会も抽選ではなくてアルバムを特定の枚数、人気歌手なら少なくて数十枚(つまり3〜5万円は最低限)を1回ごとに買わないと参加できない。「マスター」として認知されるには高級なカメラを使ってアイドルや歌手の写真を撮り毎回加工し自分のSNSにアップロードする、そして写真を撮るためになら早朝や深夜から放送局の「入り待ち」をしていつ来るかわからないアイドルのために数多の時間を費やすことが必須になる。
オ・セヨンはラッキーで認知されたのではなく(もちろんラッキーもあっただろうけど)本人が多くのお金と時間を費やした結果。その結果が「推し」のレイプ事件発覚と実刑判決。

성덕はスラングで、日本語で言うと単純にアイドルから認知されているオタク、とも違い、いわゆる「半オタ関係者」、つまり芸能業界人になることで金銭を使わずにアイドルや芸能人と接触できる存在になることも含む。そう思うと邦題は、そうするしかなかったんだろうけど微妙にニュアンスの違う言葉で、実際チケットカウンターで「成功したオタク」と言われると違和感があった。これは字幕と映画内の韓国語を聴き比べることができる程度の韓国語力がある自分の実感です。

韓国内でのヒットは事件の大きさと성덕の実態を知ることの難しさを鑑みれば理解できる。ただしグローバルで見られる意識を当然していないから日本で公開するとなれば賛否が分かれるのは仕方ないことでもあると思う。

この映画を楽しみたければ「バーニング・サン事件」について、韓国芸能界について、そして韓国社会についてある程度事前に知識を持ってから映画館に行くのが良いと思う。

日本で言うならシングルを出すたび「Mステ」に出る歌手がレイプ事件に加担していることを知ったら?そして自分はその歌手から認知されていたら?
この映画はそのスケールの物語から始まっていることを理解しないといけない。
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