メル

愛の調べのメルのレビュー・感想・評価

愛の調べ(1947年製作の映画)
3.8
もしかしたら夫のシューマンよりも有名じゃないのか?🤭と思われるクララ・シューマンの半生記。

天才少女として早くから人気ピアニストだった彼女はロベルト・シューマンと結婚し7人の子どもに恵まれる。

いまいち大ブレイクする事なく不運に見舞われるシューマンを影から支え、夫の弟子だったあの三大Bのひとりブラームスとの関係も描かれる。

シューマンが彼女に捧げた「献呈」という曲をリストが得意の技巧を凝らして派手に弾いたことにクララが文句を言う場面は面白い。
しかし現代のピアニストの殆どがこの曲をシューマン=リストとしてあのやや派手なリストのバージョンで弾いているのは皮肉でもある。

クララとブラームスの関係は色々言われてる様だし、今作の中でもブラームスがシューマンの死後彼女に求婚するシーンが出てくる。
でも、数多く残されている手紙の中にそうゆう証拠は一切無いという事実から見るとその辺は後世の人が面白おかしく語ったのかもしれない。

この2人の間に恋愛感情があったにしても無かったにしても、お互いを尊重しあい、相手への敬意を持っての長い付き合いがあったのだと思う。

結婚に反対する父親と裁判で対峙するとか、女性の作曲家が認められない時代だったのでピアニストとピアノ教師になったとか、シューマンの曲を後世に伝える為に生涯かけて演奏活動したとか、聡明で芯の強い女性だったのが窺える。

ブラームス役の俳優がヒッチコックの「見知らぬ乗客」のあのサイコな殺人鬼の人で、もうその点だけが残念だった。
名演であるが故に1つの作品で強烈なイメージが付くと俳優としては残念な時もあるんだなぁ〜と。

ピアノの音源はルービンシュタインの演奏というのでどれも美しく、観賞後もトロイメライ等を聴いてしまった。
俳優陣のみなさんのピアノ演奏場面がとてもリアルで、白けることなく見られたのも良かった。
メル

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