彦次郎

ヘンリーの彦次郎のレビュー・感想・評価

ヘンリー(1986年製作の映画)
3.6
殺人鬼ヘンリー・リー・ルーカスと同居する刑務所からの知り合いにして相棒オーティス・トゥール、その妹(現実では姪)ベッキーが同居生活に加わることで変わる3人を描いたドラマ。
タイトルにある主人公ヘンリーは300人以上殺人を成し遂げた(レクター博士にも影響を与えたとか)実在の人物。ドキュメンタリーみたいに彼の幼少期からは入らず冒頭から次々に殺しを淡々と重ねていく日常が描かれています。突然娼婦をぶっ殺すあたり相棒を驚かせていましたが「手口を変えればアシがつかない」と冷静なところもあり『アングスト』に出てきた殺人鬼Kよりは頭脳も冴えている印象です。驚く相棒のほうも高校生相手にヤクを売ったり妹を凌辱対象とする人なので2人で殺人カメラ撮影を始めても違和感はありませんでした。
電気屋に行ってクソ店員に怒りをぶつけてしまうところは気分的に分からんでもありませんがこの辺りの自制心の有無が一般的な人と殺人鬼の境目なのかもしれません。従ってこの場面から陰鬱なラストも納得できる帰着です。

さて余談ですがヘンリー・リー・ルーカスという人物、ニコニコ大百科の記事によると“ルーカスが特別捜査班に協力する形で「自白」した多数の殺人事件の場所や時間を検証した所、明らかに移動距離や時間に無理があることが判明したのである。つまり彼は刑の確定・収監後も、「捜査に協力する」体で虚偽の「自白」を続けていたことになる。”とあります。自白取引で未解決事件を消去する見返りに待遇改善をしてもらっていたということで真実ならば2人殺人(それでも殺人はしているけど)で残りは全部嘘という殺人鬼というより大ペテン師のほうが相応しいことになります。本作でもこの幼少期より虐待を受けて母親を殺したことが語られていますが話が変わっていることから作品内でも虚言癖が伺えますので真実は果たして…。
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