彦次郎

プリンス/グラフィティ・ブリッジの彦次郎のレビュー・感想・評価

3.5
クラブ「グラム・スラム」(プリンス作の同名曲あり)を共同経営するキッドとモーリス(実名)が対立の末にバンド合戦を繰り広げるミュージカル風ドラマ。謎の美女オーラが天使という謎の要素も含めてスピリチュアル要素を含んでいます。青春歌謡ドラマとして大ヒットした『Purple Rain』の続編にあたりますが設定とかがフワフワしているので前作を観ていなくても問題ありません。
冒頭からマッキントッシュで作曲している先進性(公開時1990年!)を持ちつつも裸体に型掛け黒タイツでスピリチュアルな歌を追求するという怪しさ全開なキッドを演じるはプリンスで監督、脚本、主演、音楽担当でチャップリンみたいなことになっています。
ライバルであるモーリスはザ・タイムというバンドの80年代は一世を風靡した人で本作はこのバンドの復活を祝う形でプリンスが加入か企画したと推察されます。このバンドはプリンスの音楽的欲求のために組まれそこを馘首された2人がジャム&ルイスというプロデューサとしてブラックミュージックに大影響を与えているのは有名な話。そのモーリスはプリンスと喧嘩別れしているのに本作では出演、ザ・タイム復活という音楽的に意義のあるプロジェクトとなっています。その割にはモーリスは近隣のライブハウスを全買収制覇しようとしたりオーラを自宅に連れ込んだりと前作よりも「悪党」という扱いになっていますけど。
話の方は利権と女を巡るライバル対決みたいなノリですが音楽による戦いというのはプリンスらしくて良かったです。ザ・タイムの曲もプリンスが作っているので分身同士の争いにも感じますがモーリスのキャラが確立されていたのでうまくライバルモノとして成立していたように見えます。それよりもヒロインのオーラが問題で天使らしいんですがよく分からん存在でした。元々はプリンスが付き合っていたキム・ベイシンガーに出演依頼していたそうですが破局したからなのか映画の内容があまりにも合わなかったのか拒否されて…という経緯があります。むしろその辺りを取り込んだリアルな音楽ドラマの方がヒットしたような気もしますが小生の妄想でしょう。
プリンスファミリー大集結!で『Purple Rain』をもう1度というようなスタンスだったのかもしれませんがゴールデンラズベリー賞において最低作品賞、最低監督賞、最低男優賞、最低脚本賞、最低新人優賞にノミネートするだけあって世間的には大失敗作とされています。プリンスは懲りたのか、この後2度映画を作成することはありませんでした。ラストの謎の爽やかさで最低作とは思いませんがセットとかチープで内容が分かりにくかったのは確か。それでも音楽的価値は高いとみるべきでしょう。当時15歳の天才シンガーであるテヴィン・キャンベルを抜擢しているところからも音楽的センスについてはさすが。『New Power Generation』が耳に残りますが聴くと『The Question Of U』が名曲。無理なストーリーにしないでライブ映画にしてくれればもっと評価は変わったのではないでしょうか。
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