荒野の狼

素晴らしき日曜日の荒野の狼のレビュー・感想・評価

素晴らしき日曜日(1947年製作の映画)
3.5
映画を撮る上で、革新的手法も取り入れつつ当時で出来る限りのことはやっている黒沢映画。本人は失敗作だと述べていたそうだが、それが何故なのかを考察するのは無意味では無い。
先ず撮影(構図、カット、流れ)はほぼ完璧である。脚本、俳優とその演技、演出そしてSEを含めBGM(劇伴)は、まあ普通。となると、残るは物語の中身の必然性、作品としてのクオリティのなんとも気恥ずかしい程の幼稚さ、気持ちの悪い大人の童話的ルサンチマン、にしてもちょっとというか、かなり子供っぽいのである。状況が「貧しい」んじゃなく、メルヘンにはなくてはならぬ普遍性に「乏しい」。ただ失敗作などではなく飽くまで未完成という事になる。その自覚があればこそ、それが後の数々の名作に結実したと言えるだろう。全ては失敗から生まれる、が、必ずしも良きものが生まれるとは限らない。その自覚もあった監督だった。何度か自殺も試みている。完全主義者と言われる所以であろう。
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