てつこてつ

ミナのてつこてつのレビュー・感想・評価

ミナ(1993年製作の映画)
4.2
20代頭に公開当時、渋谷の単館映劇場シネマライズで二回も観に行き、もの凄く刺さり、その後VHSビデオまで購入。DVD化はされず二十年以上再鑑賞を望んでいた本作が突然U-NEXTで配信開始!

Filmarks開始当初に記憶を頼りにレビューしたものを今回の再鑑賞を機に編集。

90年代を代表する若手演技派女優ロマーヌ・ボーラジェとエルザ・ジルベルスタインで、熱い女の友情を描き出す。

モンマルトルを舞台に、同じ生年月日の画家志望の孤高のヒロインと、美術ジャーナリストを目指すその親友の、それぞれの恋と二人の友情の行く末を、1970年~1990年代初頭を時代背景に、時にユーモラスに、時に残酷な現実を突きつけながら綴っていく・・。

全体的には、女性監督ならではの繊細な目線ではありながらも、特に前半は、ヒロインたちの心情を同じ俳優たちに別のキャラクターとして登場させたり、唐突にカメラ目線で喋り出すとか、いくらフランス映画とはいえ、やや奇抜な演出が気にはなる。これは劇場公開時にも感じた事。

また、ナレーションの入れ方も気にはなるが、これだけの歳月が流れて再鑑賞しても高評価なのは、根底に流れるテーマと最後の30分間の展開がやはり自分には刺さったから。

約20年間にわたるヒロインたちの姿を追いかける物語だが、ロマーヌ・ボーランジェとエルザ・ジルベルスタインが見事に少女時代と成人した女性像を演じ分けている。特にエルザ・ジルベルスタインは特殊メイクなど無しでの体重の増量・減量をしてのプロ根性。本当に別人のように美しいエレガントな大人の女性に変貌していく。

1970年代後半の二人のファッションは、いくら高校生という設定にしてもあまりにもダサく、そこから、アメリカのヒッピー文化にフランスならではのカラフルな色使いを取り入れたコーディネート、二人が成人した後の、まさにパリジェンヌといったシックな装いなどファッションを見るのも楽しい。

個人的にはタイトルロールのミナのアトリエの美術セットが素晴らしいと思う。

二人のヒロインが好きになる男性が揃いも揃って全員が長髪ってのは、その時代の流行なのか、はたまた単に監督の好みなのか?

二人の青春の思い出の象徴として、悲劇の歌姫ダリダの代表曲「18歳の彼」が流れる重要なシーンが序盤と終盤に挟み込まれるが、生き方にも恋にも不器用なヒロインが最終的にある重要な決断をするきっかけと使われる展開が切なくも美しい。

この「18歳の彼」を含む、主に管弦楽器の楽曲から構成される本作のサントラアルバムも非常に素晴らしく聴き応えがあり、ずっと自分のウォークマンに入れており、今も折に触れては聴いている。

フランスを代表する名優リシャール・ボーランジェの娘であるロマーヌ・ボーランジェは愛らしい瞳とやや低い声がとても魅力的。この作品の後に劇場公開され、見事な体当たりの演技を見せたシリル・コラール監督の遺作「野性の夜に」の配信開始にも期待している。
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