ルーク大佐

3時10分、決断のときのルーク大佐のレビュー・感想・評価

3時10分、決断のとき(2007年製作の映画)
4.3
西部劇が見たい人、リーダー格の人、ともかく人間心理に関心を持つ人におすすめしたい傑作だ。

悪名高いカリスマ的強盗団リーダーのラッセル・クロウのもとには多くのゴロツキやガンマンが集まり、強い結束を誇る。部下のベン・フォスターは彼に命を捧げているかのように心酔している。些細なミスでラッセルがつかまり、ムショにぶちこまれることになったため、ベンらが救出に向かう。ベンが彼に盲目的に付き従う演技が実にうまい。

一方、クリスチャン・ベールら腕自慢の連中は、ラッセルを駅まで護送して名誉と金を得られることを夢みている。その駅までの護送がいわゆるロードムービーになっており、さまざまな危機が訪れ、護送役が次々と命を落としていく。このあたりの盛り上げ方は実にセンスがある。

いつしか苦難をともにするうち、ラッセルとベールの間で使命を尊ぶ男同士の“友情”が芽生える。2人とベールの息子の演技がうまく絡まり、最後まで緊張感が尽きない。

ラッセルのキャラ造形が奥深い。ふとした会話で聖書の箴言をつぶやき、銃には十字架の黄金像を刻み込む。信心深いと思いきや、人に親切を与えすぎるのはよくないと語り、偽善者を最も嫌う。そのルールをラスオチでは自ら破ることになる。このストーリーの流れは絶妙だ。

ベールは片足にハンディがあるけど、最後まで命がけで使命を全うしようとする。その姿を見て、ラッセルは心を揺り動かされたのだろう。最後の闘いの時間がくるまでの間、ラッセルは聖書の裏表紙にベールが佇む姿を描いていた。

裏切り者がはびこる世界において、いくら説得しても頑なでバカ正直な男を見て驚き、やや呆れる一方、レスペクトに値する男と認めたに違いない。聖書が始まる前の見開きページに姿を描いたことが意義深い。聖書の精神をもっとも体現した男の象徴として描き残しておきたかったのか。

最期の戦闘シーンでラッセルが見せる表情が感動を誘う。息子の演技も心に刺さる。男が持つべき誇りと父親が家族に伝えるべき誇り。
西部劇の枠を超え、完成度の高い脚本を備えた重厚なアクションムービーだ。
ルーク大佐

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