汽笛の音で目を覚ます

紳士協定の汽笛の音で目を覚ますのレビュー・感想・評価

紳士協定(1947年製作の映画)
4.8
まだユダヤ人差別の根強い時代のアメリカが舞台で、グレゴリー・ペック扮する雑誌の記者がユダヤ人をよそおって、その体験をもとに反ユダヤ人主義の本質を記事にしようとする話。

この映画が公開された1947年当時も、まだ実際にアンチ・セミティズムが蔓延していたこともあり、ユダヤ人差別というテーマは実際にタブー視されていたとのこと。そしてこの映画は、そのテーマをはじめて映画の中で描いている。この事実だけ見ても、歴史的に非常に価値のある作品であることは間違いなさそう。

良かったのは、ドキュメンタリー映画ではないため、ただ分かりやすい悲劇的な差別の事実を羅列する映画ではないということ。あくまでフィクションの中で差別という実態をややマイルドに描きつつ、子供にも分かる言葉でごくごく当たり前の善悪を説いてる。

もちろん単純に設定もストーリーも面白いのもあるけど、そのおかげで子供も大人も楽しめる仕上がりになってる。メッセージ性を盾にした退屈な作品は数多くあるけど、この作品はそうしゃないから気軽に人におすすめできそうなのも良かった。

個人的には終盤の主人公の母親の台詞がハイライトだった。見た人は多分具体的に言わなくても分かると思うけど、このシーンは当時の人が見るよりも今の時代を生きる人たちのほうが刺さるはず。映画の良さってこういうことだよなあと思った。