金宮さん

ウンタマギルーの金宮さんのレビュー・感想・評価

ウンタマギルー(1989年製作の映画)
3.5
返還直前の沖縄を、18世紀からの伝承義賊民話とクロスオーバーさせる。

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元ネタの義賊は沖縄封建豪族がターゲットだったが、今作の相手は米軍とそれに取り入る内地人のようだ。

ということで「琉球のアイデンティティ」がテーマなのは間違いのだが、隠喩だらけマジックリアリズム全開の映画なので思想はそれほど直接的ではない。悪くいえばわかりづらいのだが、個人的には賛成。イデオロギッシュすぎない姿勢はメッセージを伝えるためにクールダウンしてる感じが見てとれて、逆に熱い気持ちが伝わってくる。

独立派への攻撃に対して、小林薫ギルーが「琉球人は日本人でもアメリカ人でもない!」と表明したあと、相棒アンダクェーから茶化されたりする。

"今、政治的な発言をしたね?"(アンダクェー、ちょっと茶化した感じ) → "銃声を聞くとその気になるよ"(ギルー、すこしニヤつきながら返答)

まさにこの姿勢というか、そっちが勝手にきたから政治的になっちゃってるだけなんですけどーといった感じ。

主張のために選択したファンタジックという手法の結果、色んな映像とともに琉球アイデンティティの存在を忘れることはなさそう。

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・とはいえ、ちんぷんかんぷんは残っていておそらく半分くらいしか解釈できていない。「去勢された親方=魂を売った内地人」「豚の化身マレー=沖縄の美の象徴」であってるのかな?

・最近は好々爺な小林薫さんですが、ミステリアスな雰囲気が最高。「それから」とかもこのあたりだったし、無敵だったんだろうなあ。

・三線の音色って明るい感じだけど悲しみも含んで聴こえたりする印象があって大好きだったんですが、今回で「妖しい」要素も加わりました。ありがとうございます。
金宮さん

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